私だけの嫌いなアイツ
喧嘩するほど仲が良い?
『これからよろしくね。』
『こちらこそ、よろしくな。』
それは3年前の事。
私、渡辺彩子(わたなべあやこ)とあいつ…西田龍司(にしだりゅうじ)はそれぞれ営業課と制作課に分かれて[株式会社エーディーシー]に勤めることになった。
エーディーシーは宣伝、広告を主に行なっている会社である。
営業課と制作課は1人1人にペアがおり、そのペアで広告を生み出し、お客様にプレゼンするのである。
いわゆる、会社の中での運命共同体である。
そして、私とあいつは3年前の春。
ペアを組んだ。
初めは同期で、イケメンで、仕事もできそうでラッキー!なんて思ってたが…
現実はそう甘くない…
ーー現在ーー
「だーかーらー!何回言えば分かるんだよ!!こんな無茶な営業取ってきて、喧嘩売ってるのか!?」
西田お得意の【はなっからダメ出し】
私も負けないから!
「どこが無茶なのよ!先方様がお金は極力かけれないっておっしゃってたから、ならここは削りましょうって削ったんでしょうが!!何?もしかして、お金はかけたくないっておっしゃってる企業様に『豪華に広告打ちましょう!』って提案したらよかったわけ?
ふざけないでよ!!
そこをなんとかして、削るのが制作課の腕の見せ所でしょうが!なんとかしなさいよ!!」
渡辺彩子お得意の【お客様の希望は絶対】
バチバチの喧嘩はいつもの事。周りもいつものことすぎて誰も気に留めてなどいない。
「あのさー。こんな予算だったら、しょぼい広告した打てないよ?そこはちゃんと説明したのかよ?」
「完成イメージが出来たらお見せして、それでもダメなら少しずつ値段は上げればいいのよ。」
「ちゃんと説明してないんだな?初めの印象はこのエーディーシーのイメージになるんだぞ?わかってるのか?初めてに見せたれたイメージがしょぼいのだったら、ほかに案件回されるかもしれないんだぞ!」
「それをしょぼく見せないのも、あなたの仕事でしょ!なんとかしなさいよ!!」
犬猿の仲。
私達が分かり合い、はじめからすんなり話ができた試しがない。
周りの皆さんは『喧嘩するほど仲がいいのねー』って言ってくれるけども、本当に喧嘩するほど仲がよくなる?とは到底思えなかった。
「とりあえず、これでよろしくね!私、これからランチだからー!」
半ば強引に押しつけて、私はランチへと向かった。
「まったく…。こまったやつだよあいつは…。」
いつも最終的には西田が強引に納得させられて終わるのである。
ランチはお弁当を持参して食堂に向かう。
同期で仲良しの近衛鈴香(このえすずか)と中島桃子(なかじまももこ)と一緒に食べるのが日課だ。
「おまたせー!鈴香も、ももちゃんも今日は社食?」
「朝、時間なかったからさー」
「私は社食のBにクリームコロッケが入ってて、昨日から狙ってたのー!」
鈴香はクールでサッパリ系女子で、ももちゃんは可愛いくてふわふわ系女子。
2人ともすごく大好きな同期で、2人は同じ広報課で働いている。
「ちょっと聞いてよー!西田のやつが、またガミガミでさー!すんなり企画書受け取ればいいのに、いちいち面倒くさいの!」
「西田くんも大変だねー」
「西田くんって広報課ではモテモテくんなんだよー♪みんな密かに狙ってるんだから!そんなイケメンを独り占め出来てるわだから、彩子ちゃんはラッキーなんだよー!」
「私からすると、西田の何がよくてあんなに女子が集るのか分からないわ。」
袋をあけ、弁当を取り出し、手を合わせていただきます。
今日の弁当はすごい頑張って作った!
唐揚げに、だし巻き卵、ほうれん草の胡麻和え、ピーマンの肉詰め、可愛い顔つきのおにぎり2つだ。
「彩子は西田くんをかっこいいとか思わないの?」
「ガミガミ言ってくる親戚のおじさんにしか感じない。」
「でも、最終的になんとかしてくれるのって西田くんなんでしょ?」
「そうなんだよ。だから、さらに腹が立つの!!」
激しくお箸をだし巻き卵に突き刺し、私は自分の苛立ちを再確認した。
そう。
西田は最終的になんでも解決してくれる。
予算も広告の出来も相手との交渉も。
私達の成果は、私の成果じゃない。あいつの成果なのだ。そんなの分かってる。から尚更腹が立つんだろうな。
「西田なんて、嫌い!嫌い!!大っ嫌い!!」
だし巻き卵を串刺しにしている私を前に、表情の曇る鈴香とももちゃん。
私が【??】となった時。
「嫌い嫌いって大きな声でうっせーんだよ!バカでかい声が響いてるぞ!」
私の後ろには社食Aを持って立つ西田がいた。
西田の表情は笑顔だったが、私には分かる。無理して笑ってる時の顔だ。
さすがの私でもヤバいと思った。
「お疲れ様〜」
「お疲れ様です〜」
鈴香とももちゃんが挨拶すると、西田は会釈して去っていった。
「彩子。完全にやらかしたね。」
「彩子ちゃん。あれはダメだよ。西田くん傷ついたんじゃないかな?」
ブスブスに穴の空いただし巻き卵を見つめて、西田の心にもこれだけ穴を空けてしまったのではないかと思った。
「そうだ!もうすぐバレンタインじゃない??ごめんの意味とありがとうの感謝の気持ちも込めて、西田くんにチョコレートあげたらどうかしら??」
「あ、それいいじゃん!なんか、楽しくなりそうwww」
鈴香は完全に楽しんでるな。
でも、確かにちゃんと謝りたい。
何かきっかけがないとちゃんと謝らない気がするし。
私は弁当を胃に収め、再び仕事へと戻った。
『こちらこそ、よろしくな。』
それは3年前の事。
私、渡辺彩子(わたなべあやこ)とあいつ…西田龍司(にしだりゅうじ)はそれぞれ営業課と制作課に分かれて[株式会社エーディーシー]に勤めることになった。
エーディーシーは宣伝、広告を主に行なっている会社である。
営業課と制作課は1人1人にペアがおり、そのペアで広告を生み出し、お客様にプレゼンするのである。
いわゆる、会社の中での運命共同体である。
そして、私とあいつは3年前の春。
ペアを組んだ。
初めは同期で、イケメンで、仕事もできそうでラッキー!なんて思ってたが…
現実はそう甘くない…
ーー現在ーー
「だーかーらー!何回言えば分かるんだよ!!こんな無茶な営業取ってきて、喧嘩売ってるのか!?」
西田お得意の【はなっからダメ出し】
私も負けないから!
「どこが無茶なのよ!先方様がお金は極力かけれないっておっしゃってたから、ならここは削りましょうって削ったんでしょうが!!何?もしかして、お金はかけたくないっておっしゃってる企業様に『豪華に広告打ちましょう!』って提案したらよかったわけ?
ふざけないでよ!!
そこをなんとかして、削るのが制作課の腕の見せ所でしょうが!なんとかしなさいよ!!」
渡辺彩子お得意の【お客様の希望は絶対】
バチバチの喧嘩はいつもの事。周りもいつものことすぎて誰も気に留めてなどいない。
「あのさー。こんな予算だったら、しょぼい広告した打てないよ?そこはちゃんと説明したのかよ?」
「完成イメージが出来たらお見せして、それでもダメなら少しずつ値段は上げればいいのよ。」
「ちゃんと説明してないんだな?初めの印象はこのエーディーシーのイメージになるんだぞ?わかってるのか?初めてに見せたれたイメージがしょぼいのだったら、ほかに案件回されるかもしれないんだぞ!」
「それをしょぼく見せないのも、あなたの仕事でしょ!なんとかしなさいよ!!」
犬猿の仲。
私達が分かり合い、はじめからすんなり話ができた試しがない。
周りの皆さんは『喧嘩するほど仲がいいのねー』って言ってくれるけども、本当に喧嘩するほど仲がよくなる?とは到底思えなかった。
「とりあえず、これでよろしくね!私、これからランチだからー!」
半ば強引に押しつけて、私はランチへと向かった。
「まったく…。こまったやつだよあいつは…。」
いつも最終的には西田が強引に納得させられて終わるのである。
ランチはお弁当を持参して食堂に向かう。
同期で仲良しの近衛鈴香(このえすずか)と中島桃子(なかじまももこ)と一緒に食べるのが日課だ。
「おまたせー!鈴香も、ももちゃんも今日は社食?」
「朝、時間なかったからさー」
「私は社食のBにクリームコロッケが入ってて、昨日から狙ってたのー!」
鈴香はクールでサッパリ系女子で、ももちゃんは可愛いくてふわふわ系女子。
2人ともすごく大好きな同期で、2人は同じ広報課で働いている。
「ちょっと聞いてよー!西田のやつが、またガミガミでさー!すんなり企画書受け取ればいいのに、いちいち面倒くさいの!」
「西田くんも大変だねー」
「西田くんって広報課ではモテモテくんなんだよー♪みんな密かに狙ってるんだから!そんなイケメンを独り占め出来てるわだから、彩子ちゃんはラッキーなんだよー!」
「私からすると、西田の何がよくてあんなに女子が集るのか分からないわ。」
袋をあけ、弁当を取り出し、手を合わせていただきます。
今日の弁当はすごい頑張って作った!
唐揚げに、だし巻き卵、ほうれん草の胡麻和え、ピーマンの肉詰め、可愛い顔つきのおにぎり2つだ。
「彩子は西田くんをかっこいいとか思わないの?」
「ガミガミ言ってくる親戚のおじさんにしか感じない。」
「でも、最終的になんとかしてくれるのって西田くんなんでしょ?」
「そうなんだよ。だから、さらに腹が立つの!!」
激しくお箸をだし巻き卵に突き刺し、私は自分の苛立ちを再確認した。
そう。
西田は最終的になんでも解決してくれる。
予算も広告の出来も相手との交渉も。
私達の成果は、私の成果じゃない。あいつの成果なのだ。そんなの分かってる。から尚更腹が立つんだろうな。
「西田なんて、嫌い!嫌い!!大っ嫌い!!」
だし巻き卵を串刺しにしている私を前に、表情の曇る鈴香とももちゃん。
私が【??】となった時。
「嫌い嫌いって大きな声でうっせーんだよ!バカでかい声が響いてるぞ!」
私の後ろには社食Aを持って立つ西田がいた。
西田の表情は笑顔だったが、私には分かる。無理して笑ってる時の顔だ。
さすがの私でもヤバいと思った。
「お疲れ様〜」
「お疲れ様です〜」
鈴香とももちゃんが挨拶すると、西田は会釈して去っていった。
「彩子。完全にやらかしたね。」
「彩子ちゃん。あれはダメだよ。西田くん傷ついたんじゃないかな?」
ブスブスに穴の空いただし巻き卵を見つめて、西田の心にもこれだけ穴を空けてしまったのではないかと思った。
「そうだ!もうすぐバレンタインじゃない??ごめんの意味とありがとうの感謝の気持ちも込めて、西田くんにチョコレートあげたらどうかしら??」
「あ、それいいじゃん!なんか、楽しくなりそうwww」
鈴香は完全に楽しんでるな。
でも、確かにちゃんと謝りたい。
何かきっかけがないとちゃんと謝らない気がするし。
私は弁当を胃に収め、再び仕事へと戻った。