「好き」って言ってよ!
「そう言うことだから、じゃあ」

「えっ…ちょっと…!」

自分に背中を見せて立ち去った花恋に奈帆は声をかけたが、その背中が自分に振り向くことはなかった。

「えっ…」

奈帆はキョロキョロと首を動かして周りを見回すと、
「いや、どうしろって言うんだ!?」
と、大きな声で叫んだ。

そもそも、自分は一体どこに連れてこられたと言うのだろう!?

まずはここを脱出するのが先だと、奈帆は簡易ベッドから降りた。

「えーっと…ドアは、これみたいね」

ドアは古かったうえに立てつけが悪かったが、何とか開けて外へと出ることができた。

「誰もいない…みたいね」

花恋以外の人間がいるかと思ったら誰もいなかった。

「全く、私は今からどうしろって言うのよ…」

無責任過ぎる彼女に呆れて息を吐くと、足元に何かが落ちていることに気づいた。
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