「好き」って言ってよ!
時計は昼を少し過ぎていた。

「ーー何をやっているんだ、私は…」

ピカピカになった部屋の中を見回しながら、奈帆は呟いた。

悩んでいることから逃れたくて、自分の気持ちを認めたくないと言う訳のわからないプライドから掃除を始めたのだ。

皿洗いを終えると、洗濯機を回している間に風呂掃除とトイレ掃除を行った。

ベランダに洗濯物を全て干すと、部屋中のカーテンを全て外してまた洗濯機を回している間にフローリングを掃除した。

洗ったばかりのカーテンを取りつけると、窓拭きと網戸掃除をした。

「我ながら気分転換とかそう言う次元じゃないだろ…」

自分で隅から隅まで掃除をしたくせに、そこにいるのは何だか居心地が悪かった。

誰かに言われたと言う訳ではないけれど、心の整理ができていないと言われたような気がした。
< 136 / 145 >

この作品をシェア

pagetop