「好き」って言ってよ!
その声に振り返ると、
「ーー奈帆…?」

奈帆だった。

「えっ…出て行ったんじゃ…?」

そう聞いた青葉に、
「いや、買い物に行っていただけなんだけど…?」
と、奈帆は答えた。

彼女の手にはエコバックがあった。

「ああ、そうなんだ…」

返事をした青葉に奈帆は首を傾げると、その横を通り過ぎた。

「ずいぶんと部屋をキレイにしたんだね…」

買ったものをエコバックから取り出して冷蔵庫に入れている奈帆に青葉は声をかけた。

「仕事に行けないし、やることがなかったから」
と、奈帆は言い返した。

それから、
「着替えてきたら?」

そう言った奈帆に青葉はリビングを離れると、自室へと足を向かわせた。

出て行ってなくてよかったと、青葉は思った。
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