「好き」って言ってよ!
着替えてリビングに戻ると、奈帆がグラスに入っている麦茶を出してくれた。

自分が椅子に腰を下ろしたら、彼女はその向かい側の椅子に腰を下ろした。

「奈帆」

名前を呼んだ青葉に、奈帆は何とも言えなさそうな顔をした。

「ーー本当のことを言うなら認めたくないんだけど…」

奈帆はそう言って話を切り出すと、
「あなたのことが好きみたいです」
と、言った。

「えっ…」

何を言われたのかすぐに理解できなかったが、
「それって、婚約破棄はしない…と言うことだよね?」
と、青葉は言った。

「…まあ、そうなるんじゃない」

奈帆はそう言い返すと、息を吐いた。

彼女の耳がほんのりと赤いのは自分の気のせいだろうか?

「認めたくないのが本当のところだけど」

そう言った奈帆に青葉は椅子から腰をあげると歩み寄った。
< 140 / 145 >

この作品をシェア

pagetop