「好き」って言ってよ!
「う、嘘を言わないでくださいな!

もしかして、私が恨んでいると思ってそんなことを言っているんですか?

そんなことありませんよ!」

奈帆は首を横に振って言い返すと、
「私、あなたに婚約者ができたうえに婚約破棄までしてくれて嬉しいんですよ?

現婚約者を恨むどころか感謝をしているくらいなんですよ?

なので、そんな嘘を言わなくても…」

「嘘じゃない、事実だ」

さえぎるように青葉に言い返されて、奈帆は萎縮した。

じっと自分を見つめてくるその瞳は、まさに蛇ににらまれた蛙と言うヤツだと奈帆は思った。

奈帆は自分を見つめてくる青葉の瞳が昔からとても苦手だった。

「それでも疑うなら君の父親に確認してみろ、僕からは以上だ」

そう言うと、青葉は奈帆の前から立ち去った。

カランカランと、ベルの音が店内に大きく響いた。
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