「好き」って言ってよ!
「奈帆、もうあきらめろ」

「ぎゃっ!?」

ひょいっと青葉にお姫様抱っこされて口から悲鳴がこぼれた。

「お父様から許可が下りたならそれでいいじゃないですか」

当然のことながら、川西は助ける気がないようだ。

「ちょっと離しなさいよ下ろしなさいよ!」

青葉の胸をたたいて足をバタバタさせる礼だが、
「往生際が悪いぞ」

彼は痛くもなければ痒くもないと言った様子である。

余裕のあるその態度がますます奈帆の癇にさわった。

「そう言う訳なので失礼します」

青葉はそう言うと、奈帆を抱えたままリビングを後にした。

「ちょっと待って、離して下ろして!

一体、私をどこへ連れて行く気なのよ!?」

「どこも何も僕の家に連れて帰るつもりだが?」

「はあっ!?」

そんなやりとりをしている間に家の外に出ていた。
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