「好き」って言ってよ!
「しかし、デートか…」

2人でどこかへ出かけるのは、今回が初めてである。

「着て行く服くらいは決めた方がいいわよね…って、何であいつのために決めなきゃいけないのよ!

普段通りでいいに決まってるじゃない!

と言うか、期待なんかしていないうえに婚約破棄が目的なんだから!」

そう呟いて気持ちを落ち着かせるものの、クローゼットとタンスを開けて服の確認をしていた。

「別に何でもいいし、あいつの反応とかどうでもいいし」

服を広げてはベッドのうえに放り投げて、また広げては放り投げる…を繰り返した。

「こんなに服があるのに着て行く服がないのは何なのさ…」

そう呟いた奈帆はすぐにハッと我に返ると、
「期待なんかしてないんだから!」
と、自分に言い聞かせるように言うと広げた服を畳んで片づけた。
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