「好き」って言ってよ!
「だけど、まさか相馬さんに相手がいたとは思わなかったな。

俺、奈帆ちゃんと結婚するものだとずっと思ってたから」

哲郎はそう言って隣にいる奈帆に視線を向けた。

「あの人の名前を出すんじゃないよ!

次にあの人の名前を出したらタクシーを降りてもらうからね!」

奈帆に言われた哲郎は口を閉じた。

「あの人も私と結婚するのが嫌だったんだよ!

私たちの婚約を勝手に決めた当人たちはとっくの昔にもう亡くなってるし、実質上の決定権は私たちのようなものなのに、先代が決めたの一点張りで許してくれなかったんだよ!?

本当にひどくない!?

だから、あの人に相手がいたうえに婚約破棄してくれて本当に嬉しい!」

大喜びをしている奈帆の顔を哲郎は見つめることしかできなかった。
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