地味系男子が本気を出したら。
◆season1:小3秋

僕の女神



「転校生を紹介します。
黄瀬(きせ)大志(たいし)くんです。
皆さん、仲良くしましょうね」


黒板に大きく書かれた僕の名前。
今日から僕の担任になる先生、新しいクラス。


「…黄瀬大志です。よろしくお願いします…」

「せんせぇーっ!声が小さくて聞こえませーん!」

「黄瀬くん、もう少し大きな声で自己紹介できるかしら?」

「…っ」


小学3年生の夏休み明け、親の仕事の都合で転校。
引っ込み思案で人見知りの激しかった当時の僕にとって、これほどまでに億劫なことはない。


「…き、きしぇ、たいしです…っ」


大きな声を出そうとしたら、自分の名前を噛んでしまった。


「えっ?きしぇ?変なのーっ!」
「あはははははっ!!」


こんな風にみんなの前で笑われて、消え入りたいくらいに恥ずかしかった転校初日。
今すぐにでも帰りたいと思ったこの日、


「うるさいわよ!何もおかしいことなんてないわ」

「な、なんだよ委員長…」

「黄瀬くんはきちんと名前を言っていたわよ。聞こえなかったあなたが悪いんじゃない?」



君に出会った。



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