地味系男子が本気を出したら。
でも、唯一咲玖に対して抱えるコンプレックスが、家族だ。
咲玖の家族は仲が良い。
九竜の家も含めて家族ぐるみで付き合うくらいに。
…私の家とは、大違い。
別に悔しいとか嫉妬したりとかってわけじゃないけど、何とも言えない虚しさや切なさがある。
だから、父親の浮気がきっかけだって…咲玖にはあまり言いたくない。
つまらないプライドが邪魔をする。
「いいんだよ、無理に話さなくても」
なのに咲玖は、優しく微笑む。
「今まで桃ちゃんと一緒に過ごしたクリスマスが、楽しかったって思えてもらえたらいいなって思うけどね」
「…そんなの、当たり前じゃない」
初めて一緒に過ごした小3のクリパも、その後に過ごした咲玖とのクリスマスは全部楽しかった。
「咲玖といて楽しくなかったことなんてないわ」
「ほんとに!?」
いつか、咲玖にも話せる時がくるかしら。
自分の情けないところを、咲玖にも曝け出せる時がくるかしら。
「…咲玖、いつか聞いてくれる?
クリスマスが嫌いな理由」
いつかは話したい。
そんな願いを込めて、咲玖に尋ねた。
咲玖は笑って頷いた。
「うん、いつか聞かせてね」
「ありがとう」
私は咲玖のこういうところが好きで、救われている。