地味系男子が本気を出したら。
それから咲玖と別れた帰り道、私は決意した。
クリスマスのトラウマを乗り越えたい。
楽しい思い出で上書きしたい。
これまでもそれができているはずだけど、多分あと一押しが足らない。
それは多分、私自身が変わろうとしなければダメなんだと思う。
咲玖が誰かと一緒にいて楽しいことを教えてくれた。
大志が恋する気持ちと恋を信じてもいい、信じたいと思わせてくれた。
だから、最後の一歩は自分で踏み出す。
私は帰宅したその夜、大志に電話をかけた。
「もしもし大志?」
「あ、桃。どうしたの?」
「あの、大志…」
「うん?」
電話越しに聞こえる声は、とても優しかった。
「い、イブって…何か予定ある?」
「え…?」
「特にないなら、一緒に過ごせないかなって…」
我ながらなんてぎこちないんだろうと思ったし、大志の反応を聞くまでの時間がとても長く感じた。
「僕も、聞こうと思ってたんだ。
イブ、一緒に過ごしたいな」
「…うん」
ほっとするとともに、穏やかな温かさが心を包み込む。
こんな風に私を包み込んでくれるのは、あなただけ。
私もあなたに返したい。
あなたの愛に応えたい。
そして、呪いのように囚われたクリスマスの悪夢を乗り越えたいの。