地味系男子が本気を出したら。


「わたしもちゃんと聞こえたよ!ねっ、蒼永(あおと)も聞こえたよね?」


後ろの方に座っている、アイドルみたいな髪型(後で母親に聞けばツーサイドアップというらしい)をしたかわいらしい女の子もそう言ってくれた。
その隣に座っている物静かな黒髪の男の子も頷く。


「うん、聞こえた」

「ほら、後ろの席でもちゃんと聞こえてるじゃない。
彼の名前は黄瀬大志くん。わかった?」

「はーーい!」



その時、初めて君に名前を呼ばれて、自分の名前がキラキラ輝く特別なものみたいに思えた。

眩しいくらいに真っ直ぐな瞳をしていて、誰よりも綺麗でカッコイイ、僕の女神。
恥ずかしいし大袈裟かもしれないけど、僕にとっては女神そのものだったんだ。

春日井(かすがい)桃乃(ももの)さん。

初めて出会ったこの日から、僕は君しか見えなかった。

あんなに嫌で仕方なかった転校が、転校して良かったと思えるくらい、君との出会いは衝撃的だった。



「春日井さんは本当に頼りになるわぁ!流石は学級委員長ね。
春日井さん、後で黄瀬くんに色々教えてあげてね」

「はい」


先生のおかげで、僕は春日井さんの隣に座ることができた。
心臓が飛び出るくらいに緊張した。


「あ、あの…さっきはありがとう」


ドギマギしながらお礼を言うと、彼女は素っ気なく返す。


「別に、うるさかったからよ。あなたのためじゃないわ」

「あ…そっか」

「後で学校案内するけど、先生に頼まれただけだから」

「う、うん…」


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