地味系男子が本気を出したら。
「ねっ、蒼永と桃ちゃんもいいでしょ?」
「咲玖が言うならいいよ」
「やったー!」
「はぁ…、ほんとに咲玖は突拍子もないこと言うんだから…。
わかったわよ、友達ね」
その時、僕の心に火が灯ったような温かさが生まれた。
友達ができた。
何よりも春日井さんと友達になれた。
震えるくらいに嬉しかった。
「ありがとう…!僕、転校するのすごく不安だったから、すごく嬉しい…っ」
恥ずかしいから我慢したけど、涙が出そうになったくらい。
「ほんとにいいの?」
「え?」
「私はともかく、あの二人はちょっと特殊よ」
「特殊?」
「ま、今にわかるわ」
春日井さんの言葉に首を傾げつつ、転校初日は終わった。
帰宅して両親に友達ができたことを話したら、とても喜んでくれた。
でも、気になる女の子ができたことは秘密にした。
まだまだ不安なこともあるけど、新しい学校生活も何とか頑張れそう。
明日はもっと、春日井さんと話せるといいな…。
もちろん、白凪さんと九竜くんとももっと仲良くなりたい。
期待に胸を膨らませて、眠りについた。
この時の僕はまだ、のんきだったと思う。
新しくできた友達が嬉しくて、全然わかってなかったんだ。
あの三人は、陰気で地味なメガネの僕が気安く話していい相手じゃなかったなんて――…。