地味系男子が本気を出したら。
脈絡もなく、突然何を言い出すのかと思えば……。
「え?」
「黄瀬くんだけずるくない?」
「ずるいかしら…?じゃあ、朝陽?」
常盤くんの表情がパアアっと明るくなるのと、僕の表情が曇るのはほぼ同時だったと思う。
「嬉しいよ!なら俺も桃乃って、」
「それは馴れ馴れしすぎるんじゃないかなぁ!?」
思わず口を挟んでしまった。
「馴れ馴れしいって、それは君の方なんじゃないの?」
「僕はその、呼びやすいから……」
ちゃん付けはやめて欲しいと言われてしまったし、桃乃は何となく恥ずかしかったんだよ……。
今も内心緊張しながら呼んでるんだけど。
「急に下の名前で呼び始めちゃってさ」
「最初から呼んでた人に言われたくないよ」
「ちょ、ちょっとあなたたち…」
「きゃーー!!」
突然さっちゃんの声が響いた。
「火が強くなっちゃったー!」
飯盒の火がかなり強くなり、燃え盛っている。
慌てて僕たちは火を弱めにいった。
「ごめん、私さっきから全然役に立ってないね…」
「いやいや、誰にでも失敗はあるよ」
正直さっちゃんが緩和剤みたいになってるから、すごく助かってたりする。
…ダメだな、どうしても常盤くん相手だと張り合ってしまう。