地味系男子が本気を出したら。
えっと、まだ洗い物の最中なんだけどな……。
チラッとさっちゃんの方を見たら、
「あと少しだから大丈夫だよ!」
「いいの?ごめんね」
「ううん!」
さっちゃんに甘えて残りはお願いし、僕は彼女たちについて行った。
みんながいる場所より離れた、人気のない場所だった。
「あのね黄瀬くん!この子、黄瀬くんと付き合いたいんだって」
えっ――…
「この子、栗山菜緒。知ってるでしょ?
2組で一番美人なんだよ!」
紹介された栗山さんは、長い髪が綺麗で確かに美人だとは思うけど、正直知らなかった。
なので当たり前みたいに知ってるでしょ?と言われても、反応に困る……。
これ、知らないって言ったら失礼だよね……。
「な、なんとなく…?」
「でしょ!黄瀬くん彼女いるの?」
「いないけど…」
「じゃあ菜緒と付き合いなよ!
二人並ぶとすごくお似合いだよ!」
こ、これは一応告白されてる…のか?
でも栗山さん本人はずっと恥ずかしそうに俯いてて、目も合わないんだけど……。
「今彼女いないならいいじゃん!」
「…気持ちは嬉しいけど、ごめんね。
他に好きな子がいるんだ」
「え…」
「今はその子のことでいっぱいだから、ごめんね」
そう言って立ち去らせてしまった。
結局栗山さんとは一度も目が合うことなく、声も聞けなかった。