地味系男子が本気を出したら。


僕が尋ねると、急にしどろもどろになった。


「あっ…えっと…」

「常盤くん?」

「俺一人で逃げてきちゃった……」

「はあ!?」

「し、仕方ないだろ!俺は昔から雷はダメなんだよ…!!音がして、反射的に…っ」

「桃は今どこにいるの!?」


常盤くんの両肩を掴んで問い詰める。
彼はビクビクしながら答えた。


「す、水道近くの用具入れ…」


あそこか……!!

場所を把握すると、即座に走り出した。
大雨とか雷とかどうでもよかった。

さっちゃんに呼び止められた気がしたけど、その声も無視して用具入れのある方へと駆けていった。


「桃!!」

「…大志…?」

「はぁ…っ、よかった…!」


桃は隅っこの方でしゃがんでいたけど、僕のことを見るなり慌てて駆け寄った。


「びしょ濡れじゃない!風邪引くわ!」


桃は自分のタオルで僕の頭を拭いてくれた。
こんなに濡れてしまったから、髪の毛の癖も酷くなってると思うけど、そんなのどうでもいい。


「大丈夫?」

「大丈夫よ。急に大雨になったから出るに出られなくて…朝陽は無事?」

「うん、もう戻ってるよ…」

「そう、よかった。雷に酷く怯えていたから心配してたの」


常盤くんは君のことを置いて行ったのに、彼のことを心配するんだね……。


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