地味系男子が本気を出したら。
常盤くんは案外あっさりとした口調で教えてくれた。
「正直、自分でもアレはなかったなぁと反省したよ。
逃げたことが原因ではないと言ってくれたけど、それもあるだろうね。
まあとにかく、敗者は潔く立ち去るよ」
「常盤くん…」
「慰めとかいらないからね?君に慰められるのは腹が立つ。
別に応援もしないから、フラれた時だけ教えてくれよ」
そんな風に憎まれ口を叩かれたけど、内心で常盤くんには感謝していた。
常盤くんがいなかったら、僕は自分の殻を破って変わろうと踏み出せなかったかもしれない。
お礼を言うのは違うと思うし、カッコつけすぎだから言わないけどね。
僕は僕自身の力で彼女と向き合って、振り向かせるよ。
そんなわけで、花火大会にはいつもの三人で行くことになった。
「ちなみに聞くけど、九竜は帰って来ないのよね?」
「うん、夏休み毎日空手と剣道の練習、どっちかあるんだって」
「大変だねぇ蒼永くん…」
「…なら、いいこと思いついたわ」
桃がたまに見せるニヤッとした悪戯な笑みだ。
「咲玖、浴衣着なさいよ」
「浴衣!?」
「そう。浴衣姿を九竜に送ってあげたら喜ぶんじゃない?」
確かに、喜びそう。
蒼永くんのことだから、表情はあんまり変わらなさそうだけど。