婚活
朋美と電話を切り、家の目の前に居たがクルッと向きを変え、また今来た道を戻る感じで駅へと歩き出す。途中、和磨の家に入る路地を横切る際、チラッと和磨の二階の部屋を見上げたが、部屋の電気は消えていた。ご飯中かな?すぐさままた前を向き、駅へとはやる気持ちを抑えながら歩いていた。朋美は、どうするんだろう?どうするも、こうするも、答えは自ずと出ているような気がする。朋美は小林さんと結婚する。そして、待望のベビーが産まれる。俗に言うできちゃった婚だけど、この際、順番なんてどうこう言っていられないんだもの。だけど……まさかこんな身近な人にそんな事が起きるとは、正直、夢にも思ってなかった。まして、朋美曰く、お試し期間中が始まったばかりといっても過言じゃないのに……。でも、朋美の気持ちはどうなんだろう?勿論、産むつもりだろうと思う。小林さんだって、それなりの仕事をしている、れっきとした一社会人。当然、言葉に語弊はあるかもしれないが、責任は取ってくれるはず……だよ……ね?私の中では当然と思ってる事だけど、あぁ、果たして あの二人の中ではどうなんだろう?朋美……。小林さんと結婚する気は、あるよね?駅までの道程、だんだん不安になりながら、それと共に足早になっていくのが自分でもわかった。
カフェに着くと、朋美はまだ来ていなかったが、コーヒーを買って席に座った途端、お店の入り口から朋美が入ってくるのが見え、思わず小さく手を振りなるべく冷静さを装う。
「ごめんね。待った?」
「ううん。今、座ったところ。朋美も何か買ってきたら?」
「そうだね。そうする」
あっ。
「朋美」
オーダーをしに行こうとした朋美を呼び止めると、朋美が不思議そうに振り返った。
「コーヒーは駄目だよ。出来れば……そうだな。ミルクとか、なるべくカフェイン……」
「わかってる」
私の言葉を遮るように言って朋美は席を離れると、すかさず空いてるカウンターを見つけて注文をして、暫くすると席に戻ってきた。
「いちばん無難な、ホットミルクにした」
そう言いながら私の顔を見た朋美は、何となく少しやつれて見える。
「大丈夫?」
「嫌だ。珠美ったら別に病人じゃないんだから、そんな大袈裟に聞かないでよ」
「だって……もうビックリしちゃって、安定期に入るまでは、結構ケアが必要だって言うし……」
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