婚活
「そういう事って、長年一緒に居たりとか抜きにして、自分が大事な彼女の事だったらちょっとした変化も見逃さずに見てるって。だからもし彼女が不安そうな顔してたら、男だって普通、気付くはずなんじゃねぇの?」
和磨……。
確かに好きな男の事って、そんな些細な事も知っていたいって思う女心は、幾つになっても変わらない気がする。男って人にもよるけれど、鈍感そうでいて女とは見る観点がやっぱり違うのかな。今日はもう遅いから、明日、未来王子との約束の件、相談所に電話して もう1回スケジュール調整をしてもらおう。そんな事を考えてるうちに寝ていたらしいが、どうしてこう朝が来るのが早いんだろう。寝てる時間は、まるで2倍の速さで時間が経っているように思えてしょうがない。ランチタイムに相談所に連絡して丁重にお詫びを入れ、先方との約束の日にちを変更してもらうようお願いした。
土曜日が近づくにつれ、朋美の事なのに私自身が緊張してきてしまっている。何とも複雑な思いがだんだん交錯し始め、朋美がそういう考えなら妊娠していない事を望んでしまっていて、金曜の晩はその緊張もピークに達し、明日どうなるのか。検査の結果によっては、 朋美はどうなってしまうのか。朋美のお腹の子は……。いつもそこで考えがまとまらなくなってしまう。あぁ、どうしよう。そんな思いのまま、土曜日の朝を迎えた。ようやく浅い眠りについていたが、裕樹がまだ朝も暗いうちから起きだして、ガタガタし始めたので目が覚めてしまった。そうか……。今日は和磨と紅葉を見に行く日か。泊まりで行くのかな。ふとその事だけを確かめようとして、部屋のドアを開けて裕樹を呼び止めた。
「早くからご精が出ますねぇ。今夜は、お・と・ま・り?」
「そう。せっかく結構遠くまで行くんだから、もったいないだろ?」
「ふぅーん。お気張りやすぅ」
「うるせぇ」
ドアを閉めかけたところで、裕樹のそんな声が聞こえた。泊まりって事は、和磨もあの久美子という彼女を連れて行くんだろうな。まぁ、私には関係ないけど。時計を見ると、朋美との待ち合わせの時間までにはまだ5時間以上もあるので、もう一度、寝られるかどうかわからないが、取り敢えずベッドに潜り込んだ。
「うーん……」
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