婚活
立ち止まって目を疑った。何で紅葉を見に行っているはずの和磨が、今、ここに居るんだろう。ほぼ同時に、和磨も私の存在に気付いたらしく、こちらをジッと見ていたが、立ち止まってしまっている私とは違い、ごく自然に歩いてくる。その距離が10m、5mと縮まってくるにつれ、自分が緊張していくのがわかった。そして表情がはっきり見えた途端、和磨が行く手を阻むように目の前で立ち止まった。
「ヨッ!」
「和磨」
何故か、気まずい思いでいっぱいだった。和磨が今、ここに居る事自体、理解出来ないけれど、会ってはいけない人に会ってしまったような、そんな感覚で和磨の顔を見上げていた。
「何と言われようと無理だからとか言ってた用事に、これから出掛けるのかよ?」
エッ……。
「そ、そうよ」
「ふぅーん」
な、何?和磨が意味ありげに私の服装を、上から下まで見ている。
「そのわりに、いつもと変わらない格好だよな?」
鋭いな。
「べ、別にいいでしょ?和磨には関係ないじゃない。急いでるから」
目の前に立ちはだかっている和磨をかわし、横から通り過ぎようとした。
「待てよ!」
和磨が私の腕を掴んだ。
「何?まだ何かあるの? 私、急いでるんだけど」
「珠美。お前、まさか産婦人科に行くんじゃないよな?」
和磨……。
「いい加減にしてよ。私じゃないって言ったでしょ?何度も言わせないで」
腕を掴んでいる手を強引に振り払い、和磨を睨んだ。
あっ……。ポケットの中で、携帯が鳴っている。
「携帯、鳴ってるぞ」
「わかってるわよ」
おもむろにポケットの中から携帯を取り出し、画面を開く。
―相談所―
エッ……。
何だろう?でも和磨の前では電話しづらい。きっと未来王子との約束の件だ。出なきゃ……。仕方なく、後を向いて電話に出た。
「もしもし?」
「沢村様でいらっしゃいますか?」
「は、はい、そうです。こんにちは」
和磨に聞かれたくない一心で、電話をしながら駅の方に向かって歩き出した。
「実は、沢村様には大変申し上げにくいのです……」
「はい……」
何だろう?
「お日にちを変更する件を先方に申し上げましたところ、何かとてもご立腹されてしまわれまして……」
「えっ?」
ご立腹って?
「こういった大事な用件をさておき、それよりも違う用事を優先されるような方とは価値観が違い過ぎるのでお断りしたいと、おっしゃられてしまわれまして……」
「ヨッ!」
「和磨」
何故か、気まずい思いでいっぱいだった。和磨が今、ここに居る事自体、理解出来ないけれど、会ってはいけない人に会ってしまったような、そんな感覚で和磨の顔を見上げていた。
「何と言われようと無理だからとか言ってた用事に、これから出掛けるのかよ?」
エッ……。
「そ、そうよ」
「ふぅーん」
な、何?和磨が意味ありげに私の服装を、上から下まで見ている。
「そのわりに、いつもと変わらない格好だよな?」
鋭いな。
「べ、別にいいでしょ?和磨には関係ないじゃない。急いでるから」
目の前に立ちはだかっている和磨をかわし、横から通り過ぎようとした。
「待てよ!」
和磨が私の腕を掴んだ。
「何?まだ何かあるの? 私、急いでるんだけど」
「珠美。お前、まさか産婦人科に行くんじゃないよな?」
和磨……。
「いい加減にしてよ。私じゃないって言ったでしょ?何度も言わせないで」
腕を掴んでいる手を強引に振り払い、和磨を睨んだ。
あっ……。ポケットの中で、携帯が鳴っている。
「携帯、鳴ってるぞ」
「わかってるわよ」
おもむろにポケットの中から携帯を取り出し、画面を開く。
―相談所―
エッ……。
何だろう?でも和磨の前では電話しづらい。きっと未来王子との約束の件だ。出なきゃ……。仕方なく、後を向いて電話に出た。
「もしもし?」
「沢村様でいらっしゃいますか?」
「は、はい、そうです。こんにちは」
和磨に聞かれたくない一心で、電話をしながら駅の方に向かって歩き出した。
「実は、沢村様には大変申し上げにくいのです……」
「はい……」
何だろう?
「お日にちを変更する件を先方に申し上げましたところ、何かとてもご立腹されてしまわれまして……」
「えっ?」
ご立腹って?
「こういった大事な用件をさておき、それよりも違う用事を優先されるような方とは価値観が違い過ぎるのでお断りしたいと、おっしゃられてしまわれまして……」