婚活

何？何で和磨が不機嫌にならなきゃいけないの？
「そんなに一緒に来たければ、くればいいでしょ？でも何処に行くかも決めてないし、あっちこっち行くかもしれないから、文句言わないでよ？」
「ハッ？何だよ、その条件付き。まぁ、いいや。多目にみてやるよ」
「何よ、和磨。その偉そうな上位目線な言い方は」
「珠美。本当は俺……」
な、何？
急に和磨が真顔になって、私を見た。
「和磨ぁ」
誰？
和磨を呼ぶ声が聞こえ、声のする方を見ると、和磨の後から見覚えのある女が走ってくるのが見えた。和磨も振り返って見ている。あの子……。
「和磨。何？あの子と会う約束してたんじゃないの？」
「久美子……」
頭の中を大急ぎで整理してみる。和磨は今朝、裕樹と一緒に紅葉を見に行かなかった。だから今、こうして私の目の前に居る。もし紅葉Ｗデートだとしたら、あの子も一緒に行っていたはず……。でもあの子も今、ここに居るって事は、和磨とあの子は紅葉に行かなかった。若しくはいけなくなった。裕樹たちとは、別行動をとる事にした？だからあの子が今、ここに登場して……。でも、何故、和磨は買い物に付き合ってやってもいいなんて言ったの？それは私に対する哀れみ？同情？考えを張り巡らせているうちに、彼女が近づいてきた。
「和磨。家に言ったら駅に行ったっておばさんに聞いて。はぁ……息切れちゃったわよ。あっ、いつぞやはファミレスで」
久美子という子は、私に気付いてお辞儀をした。
「こんにちは。その節は……」
「久美子。ちょうど良かった。これから買い物行くから」
「そう」
何？和磨。その子も一緒に行くの？ちょうど良かった。これから買い物に行くからって、もしかして最初から二人は買い物に行くつもりだった？そこに私が登場して、だから和磨は一緒に行ってやってもいいよと言ったんだ。一緒に行ってやってもいいよというのは、彼女との約束の下、ついでに誘ったという事？いずれにしても彼女に悪いし、まして気も遣うし疲れるだけ。
「和磨」
「何だよ？」
「買い物は二人仲良く行ってきて。私は一人でゆっくり見てまわりたいから。それじゃ」
「珠美。待てよ」
歩きかけた私の腕を、またしても和磨が掴む。もう頼むから、放っておいてよ。
「何？」
うんざりしながら振り返り、和磨に口を挟ませないように言葉を続けた。