婚活
はぁ……。またしても、獲物は売約済みか。

「珠美?あんた熊谷の事、気に入ってたんだ」

「そ、そんな事ないってば。第一、社内だといろいろ大変ジャン?別れた時とか気まずくなるだけだし」

その場凌ぎの言い訳で、必死に誤魔化した。

「でもさ。もしかしたら、彼女いないのかも?」

「彼女いないって……」

「わからないのよ。でも確かに、半年前まではいたのは事実。休みの日に、デパートで仲良く家具売り場で家具見てたの目撃したから。ありゃ、彼女じゃなかったら家具売り場なんて普通行かないでしょ?」

家具売り場か。

「聞いてみれば?本人に、直接確かめてみればいいジャン」

はい?

「そんな、面と向かってなんて聞けないって。だいたい初対面の相手に、そこまで聞ける?」

「えぇ?私だったら、聞いちゃうけどなぁ」

朋美。あんたのそのバイタリティ溢れる行動には、いつも驚かされてばかりだよ。話に夢中になっているうちに由佳も合流し、由佳も構わないと言ってくれたので和磨と待ち合わせしたマウンテンビルの7階に3人で向かった。

すると、熊谷さんと和磨と計5人かと思いきや、もう1人営業の和磨の同期の子も一緒に来ていた。営業は、いいなぁ。若い子ばかりで……。

テーブルに座る時、何故か端の和磨の前に由佳が先に座ってしまい、真ん中の席を陣取った朋美の前には和磨の同期の浅岡君が座ったので、熊谷さんの前に私は座ることになってしまった。

うわっ。目の前じゃ、直視出来ないよ。

「昼間は、どうも」

「いえ……こちらこそ」

ヤバイ、まずい、レスキュー……。心臓バックバクいってるし。

乾杯をしてからは、みんなで最初は話していたが和磨が由佳に何か話し掛けてからというもの、殆ど対面の男と由佳も朋美も話していて必然的に、私は熊谷さんと話している。

だけど、話しの内容は当たり障りのない事ばかり。突っ込んで、彼女いますか?なんて間違っても聞けない。

「あっ。そういえば熊谷さんって、今彼女いらっしゃるんですか?前は、いらっしゃいましたよね?」

中ジョッキをガンガン呷っている朋美が、テーブルに伸ばした手を置いて身を乗り出すようにして聞いている。

朋美ったら、かなり酔ってるな。

「ハハハッ……。さぁ、どうだろう?居ると言えば居るし、居ないと言えば居ないのかも?」

熊谷さん。

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