婚活
「和磨。私が誤解してた人じゃなくて、別に好きな人が居たんです」
和磨に、別に好きな人が居た?
「和磨がそう言ったの?」
思わず聞き返してしまった。
「はい……。最近、ずっと何か考えていたのは知ってたんです。それで私、疑ったりして……。直接は言わなかったですけど、きっと和磨は私があんな事言ったりしたからそれが余計、引き金になっちゃったみたいです」
「……」
「遅かれ早かれ、こうなる運命だったんですね……」
何て声を掛けてあげたらいいのだろう?和磨の心の変化を彼女は気付いていて、それで いろいろ考え過ぎた結果、和磨を疑ってしまって……。それが元で、和磨と別れるきっかけになってしまった。
「身から出た錆ですね。自業自得です。いろいろご迷惑お掛けしました」
「いえ、そんな……」
「それじゃ、失礼します」
「気をつけて」
和磨。何、考えてるのよ。他に好きな人が居たってどういう事?きっと、あの久美子って子だ。最低だよ、和磨。二股掛けていたも同然じゃない。せっかくすっきりしかけていた気持ちがまたドドーンと落ちてしまい、途端、足取りも重くなってしまった。
最悪の土曜日……。
せめてパックでもして寝よう。何もする気もなれず、半日を寝て過ごした土曜日はあっという間に夜になってしまい、未来王子を探しながら新しもの好きな私は買ってきたパックを顔に貼り付け、画面の向こう側へと思いを馳せていた。

このパックいい!
日曜の朝は流石に9時半には目覚め、顔を洗っていると何か頬がみずみずしい。何、何?これ、肌の水の弾け具合が違うジャン。今週のお買い得になってたから買ってきたものの、こんなに効果あるとは思わなかった。もっと買ってくれば良かったよ。そうか!今日も買いに行けばいい事ジャン。朝ご飯を食べ終わり、適当に部屋の掃除も済ませてからいそいそ駅前の薬局まで、また今日も向かってる私って、本当に暇だよな。
曲がると和磨の家に続く路地を通り過ぎた。最近、恒例となっている和磨の部屋を見上げたが、カーテンも閉まっているからまだ寝てるのかもしれない。
「姉貴」
ん?
後から裕樹の声がして振り返った途端、縁石に躓いて転びそうになってしまった。
「何、やってんだよ。足腰弱る年齢には、まだちょっと早いだろう?」
「いちいちうるさいわねぇ。急に話掛けるからよ」
「和磨。まだ寝てるだろ?」
「……」
< 133 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop