婚活
「夕べ、遅くまで俺が押しかけてたから」
その割に、裕樹は早起きだな。さては……。
「何?これからデート?」
「まぁ、そんなところかな?結局、和磨と和美ちゃん、無理だったみたいだな」
「そ、そうみたいだね。あの子、大丈夫かなぁ?」
そんな話しをしながら、裕樹と駅まで向かう。
「帰りにあの子にまた会ってさ。和磨に……好きな子が居るってあの子言ってたけど、それって久美子っていう子?」
「はぁ?」
いきなり、裕樹が突拍子もない声をあげた。
「久美子は俺達と同じ大学で、今は教師やってるよ」
「教師?」
「そう。久美子は大学卒業してすぐ教員になったから。ほら、来年から和磨も教師になるだろ?だからいろいろアドバイスや教科書とか貰って今からレクチャーしてるらしいよ」
そうなんだ。あの彼女も教師だったんだ。
「何?和磨の奴、和美ちゃんにそんな事言ったのかよ?」
「えっ?う、うん。彼女がそう言ってた」
「あっ、まずい。俺、15分の急行に乗るから、姉貴。先行くわ」
「うん。じゃぁね」
裕樹はそう言って走っていった。
お目当ての今週のお買い得になっているパックを買って、店を出た。何となく気分が悶々としている。和磨の彼女だと思っていた人は実は違って、和磨は彼女と先月別れていた。だとしたら、やっぱりあの久美子って人が和磨は……。
「こんにちは」
うわっ。
噂をすれば。後から追いついてきた張本人が、私の横に並んで歩いていた。
「こ、こんにちは」
「珠美さん。お買い物ですか?」
「えっ?ま、まぁ……」
気のせいか、やけに今日は馴れ馴れしく、妙に明るい気がする。
「昨日、和磨から電話もらって……ウフッ」
何、一人でにやけてるだろう?
「私、珠美さんに感謝しなきゃ」
何の事?
「和磨。珠美さんの事、好きだったんですよね」
「えっ?」
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