婚活
「ただ同じだからこそ、マイナスとマイナス、プラスとプラスのように、引き合えずに反発しあってしまう事が多いのも事実。沢村さんと彼は、まさにそれなんじゃないのかな?」
「……」
「僕はそう思ったけど」
「加納さん。一つお聞きしてもいいですか?」
意を決して、加納さんの意見が聞いてみたかった。
「一人の男性としてお聞きしたいのですが……。加納さんがもし和磨の立場だったら、この先、私との事……どうしようと思いますか?」
「……」
加納さんは黙ったまま、ジッと空を見上げている。
「加納さん?」
「こういう時って、どうしたらいいんだろうね?」
「えっ?」
「もし僕に置き換えて言ったとして、それが沢村さんに先入観を持たせてしまわないかなと思ってさ……。言ってしまうのは簡単だけど僕は彼じゃないから、もし沢村さんの考えを左右してしまうとしたら言わない方がいい気がする」
加納さん。
「言うのは容易い。でも取り返しがつかなくなるとも限らない」
「それでもいいです。教えて下さい」
自分でも何となく和磨の出す答えが予想できていた。でもそれを認めたいような、認めたくないような、ある意味加納さんに引導を渡して欲しいのかもしれない。
「僕だったら沢村さんの事は内に秘めたまま、もう口には出さないと思う」
やっぱり……。私が想像している恐らく和磨もそうであろう結論を、同じ男として加納さんも下すんだ。
「加納さん。私……」
「それと、もう一つ」
エッ……。
「もし仮に、沢村さんと僕が付き合っても上手くはいかないと思う」
「加納さん……」
「沢村さんの心には、彼が。僕の心には、まだ彼女が居る限り無理だよ」
加納さんは、どうしてそこまで……。
和磨を見返してやりたいと思った。見返すという言葉には語弊があるかもしれないが、和磨が驚くような、そう……振り返るような女になりたい。
「沢村さんと僕も、似たもの同士なのかもしれないな」
「そうですね」
< 144 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop