婚活
「ううん、お待たせ。帰ろう」
戻ってきた和磨より早く今度は店を出て、お財布をポケットに入れて手袋をしながら歩き出した。
「夜は寒いよな。せっかく鍋で温まったのに、すっかり冷え切ったな」
「ごめんね。家のお母さん、ドジだから」
「いや、お袋さん。愛嬌があって……俺、好きだよ」
俺、好きだよか……。すんなり言い切れる和磨は、相変わらずだ。変わらない一面を見られて微笑んでしまったが、それを隠す事もなく和磨に向かって微笑んで見せた。
「何、笑ってんだよ?」
「ん?和磨って、相変わらず馬鹿だなぁと思っただけ」
「はぁ?お前に馬鹿とか言われたかねぇよ」
「そう思ってるのは、和磨だけじゃない?」
「何だよ、珠美!おい、待てよ」
言い逃げるように、思いっきり走り出した。すると和磨も後から追ってきて、すぐに追いつかれてしまったので、一旦、走るのをやめて歩き出す。
「何で、急に走ったりしてんだよ」
「えっ?寒いから。じゃぁね」
二歩ほど和磨より前に出て、振り向きざまそう言ってまた走り出した。
「珠美。汚ねぇ、待てよ」
あと少しで家の曲がり角に差し掛かる。このまま和磨より先に、曲がり角を曲がりたい。私の方が一年早く生まれてるんだから。変な拘りだか自負が生まれ、どうでもいい事なのにむきになって走っている自分がおかしかったが、不思議と楽しく感じられた。
ヨシ!
曲がり角を和磨より先に曲がれる。一番最短距離のコースは、小さく周り込む事。
「やったぁ。いっちばぁーん。うわっ」
「珠美!」
曲がった途端、目の前に自転車に乗った人が突然現れ曲がり角で鉢合わせしてしまい、自転車の急ブレーキの金属音が聞こえたが、一瞬、何が起こったのかわからなくなった。
「急に飛び出して来るな!」
何?
怒鳴られてる?
「すいません」
和磨?
見えない……。自転車の走り去る音だけが聞こえる。
「和磨?」
「何だよ?」
エッ……。
和磨の声が頭の上でする。嘘だ……。見上げると和磨の顔が真上にあり、私の背中には和磨の両手がまわされていた。和磨に……抱き締められている。
「珠美。怪我してないか?」
「う、うん……」
ようやく見慣れた景色が視界に入ってきて、状況が把握できた。私の後はブロック塀で、そのブロック塀と私の背中との間には和磨の両腕……。和磨の両腕?
「か、和磨!」
慌てて和磨の胸を押しながら身体を離した。
戻ってきた和磨より早く今度は店を出て、お財布をポケットに入れて手袋をしながら歩き出した。
「夜は寒いよな。せっかく鍋で温まったのに、すっかり冷え切ったな」
「ごめんね。家のお母さん、ドジだから」
「いや、お袋さん。愛嬌があって……俺、好きだよ」
俺、好きだよか……。すんなり言い切れる和磨は、相変わらずだ。変わらない一面を見られて微笑んでしまったが、それを隠す事もなく和磨に向かって微笑んで見せた。
「何、笑ってんだよ?」
「ん?和磨って、相変わらず馬鹿だなぁと思っただけ」
「はぁ?お前に馬鹿とか言われたかねぇよ」
「そう思ってるのは、和磨だけじゃない?」
「何だよ、珠美!おい、待てよ」
言い逃げるように、思いっきり走り出した。すると和磨も後から追ってきて、すぐに追いつかれてしまったので、一旦、走るのをやめて歩き出す。
「何で、急に走ったりしてんだよ」
「えっ?寒いから。じゃぁね」
二歩ほど和磨より前に出て、振り向きざまそう言ってまた走り出した。
「珠美。汚ねぇ、待てよ」
あと少しで家の曲がり角に差し掛かる。このまま和磨より先に、曲がり角を曲がりたい。私の方が一年早く生まれてるんだから。変な拘りだか自負が生まれ、どうでもいい事なのにむきになって走っている自分がおかしかったが、不思議と楽しく感じられた。
ヨシ!
曲がり角を和磨より先に曲がれる。一番最短距離のコースは、小さく周り込む事。
「やったぁ。いっちばぁーん。うわっ」
「珠美!」
曲がった途端、目の前に自転車に乗った人が突然現れ曲がり角で鉢合わせしてしまい、自転車の急ブレーキの金属音が聞こえたが、一瞬、何が起こったのかわからなくなった。
「急に飛び出して来るな!」
何?
怒鳴られてる?
「すいません」
和磨?
見えない……。自転車の走り去る音だけが聞こえる。
「和磨?」
「何だよ?」
エッ……。
和磨の声が頭の上でする。嘘だ……。見上げると和磨の顔が真上にあり、私の背中には和磨の両手がまわされていた。和磨に……抱き締められている。
「珠美。怪我してないか?」
「う、うん……」
ようやく見慣れた景色が視界に入ってきて、状況が把握できた。私の後はブロック塀で、そのブロック塀と私の背中との間には和磨の両腕……。和磨の両腕?
「か、和磨!」
慌てて和磨の胸を押しながら身体を離した。