婚活
「和磨。ちょっと待ってよ」
追い掛けながら、ふと思っていた。和磨はあれだけ飲んだのに酔ってないの?
「ハァハァ……和磨。あれだけ飲んでて酔ってないの?」
息切れしながら和磨の家の前で膝に両手を置いて私が呼吸を整えている間、和磨は玄関のカギを開けていた。
「全然、酔えねぇんだよ」
酔えないって、和磨。
「和……うわっ」
ドアを開けた和磨が、まだ膝に両手を置いたままの体勢の私の腕を引っ張り、無理矢理家の中に入れると玄関のドアを閉めた。
「和磨。私、帰るよ」
玄関のドアノブを持とうとした私を、和磨が後から抱き締めた。
「ここに居ろ、珠美」
「……」
ここに居ろって、和磨。
「珠美。お前、何にそんなに怯えてる?」
「えっ?」
和磨が不意に背中越しに言った言葉が、胸に突き刺さった。
「何もしねぇから、言ってみろ」
「和磨……」
和磨は玄関にドカッと座ると、立っている私を見上げて腕を引っ張り隣りに座らせた。
「何、言われても怒らなねぇし、驚かねぇから」
「……」
和磨は私の事を、理解してくれようとしてるんだ。
「和磨。私……恋愛に臆病なのかもしれない」
「臆病?」
和磨の問い掛けに、肯定の頷きで示す。
「幼稚過ぎて笑うかもしれないけど……そんなに恋愛経験もないし、失恋ばかりだったからかもしれないんだけど、付き合い始めた頃って相手の何でも知りたくて、何でも許せて、 何でも楽しくて、嬉しくて……。でも……」
和磨がタバコをポケットから出し、立ち上がって何処からか灰皿を持ってきた。
「いつまでもそういう時期は続かなくて、ずっと変わらないで欲しいと願いながら高校の頃とか、大学の頃もそうだったけど、いつまでも変わらないでいようね……なんてお互い言ってても、それがいつの間にか初めは手を繋いでもドキドキしてたのが、そのうちその手を繋ぐ事も稀になってきて、それで……特別な関係になっちゃうと、その時……の前とかにしか手は繋いでもらえなくなったりして……。いつしか手も繋がなくなって、新鮮さがなくなっちゃうというか、私はいつまでも変わらず手を繋げばドキドキしたりして嬉しいのに……。その手を繋ごうとしても、もう恥ずかしいからいいよとか言われて……手も繋がなくなって……それで結局、別れちゃったりして……」
和磨は支離滅裂な私の話しを、黙ったまま聞いてくれている。
追い掛けながら、ふと思っていた。和磨はあれだけ飲んだのに酔ってないの?
「ハァハァ……和磨。あれだけ飲んでて酔ってないの?」
息切れしながら和磨の家の前で膝に両手を置いて私が呼吸を整えている間、和磨は玄関のカギを開けていた。
「全然、酔えねぇんだよ」
酔えないって、和磨。
「和……うわっ」
ドアを開けた和磨が、まだ膝に両手を置いたままの体勢の私の腕を引っ張り、無理矢理家の中に入れると玄関のドアを閉めた。
「和磨。私、帰るよ」
玄関のドアノブを持とうとした私を、和磨が後から抱き締めた。
「ここに居ろ、珠美」
「……」
ここに居ろって、和磨。
「珠美。お前、何にそんなに怯えてる?」
「えっ?」
和磨が不意に背中越しに言った言葉が、胸に突き刺さった。
「何もしねぇから、言ってみろ」
「和磨……」
和磨は玄関にドカッと座ると、立っている私を見上げて腕を引っ張り隣りに座らせた。
「何、言われても怒らなねぇし、驚かねぇから」
「……」
和磨は私の事を、理解してくれようとしてるんだ。
「和磨。私……恋愛に臆病なのかもしれない」
「臆病?」
和磨の問い掛けに、肯定の頷きで示す。
「幼稚過ぎて笑うかもしれないけど……そんなに恋愛経験もないし、失恋ばかりだったからかもしれないんだけど、付き合い始めた頃って相手の何でも知りたくて、何でも許せて、 何でも楽しくて、嬉しくて……。でも……」
和磨がタバコをポケットから出し、立ち上がって何処からか灰皿を持ってきた。
「いつまでもそういう時期は続かなくて、ずっと変わらないで欲しいと願いながら高校の頃とか、大学の頃もそうだったけど、いつまでも変わらないでいようね……なんてお互い言ってても、それがいつの間にか初めは手を繋いでもドキドキしてたのが、そのうちその手を繋ぐ事も稀になってきて、それで……特別な関係になっちゃうと、その時……の前とかにしか手は繋いでもらえなくなったりして……。いつしか手も繋がなくなって、新鮮さがなくなっちゃうというか、私はいつまでも変わらず手を繋げばドキドキしたりして嬉しいのに……。その手を繋ごうとしても、もう恥ずかしいからいいよとか言われて……手も繋がなくなって……それで結局、別れちゃったりして……」
和磨は支離滅裂な私の話しを、黙ったまま聞いてくれている。