婚活

「和磨。そんな……和磨の事、年下だからどうとかって思った事なんてなかったよ」
「それは俺が思われないように、無理してたからかもな」
和磨がそんなに自分が年下だって事、気にしてたなんて気づかなかった。
「多分、今、俺が珠美に俺は変わらないと言ったところで、きっと珠美は信じられないだろうし……。だけど人の心はずっといつまでも同じとは限らないから、珠美の言いたい事もよくわかる。でも相手を信じられなきゃ、自分も信じてもらえないぜ？」
和磨を信じてないわけじゃない。でも不安になのも確かで……。
「誰かの詩にもあるように、きっと珠美は出逢った頃はこんな日が来るとは思わなかった……みたいな結果に終わるのが嫌なんだろ？でも怖がってたら何も出来ないぜ？先の事なんか誰にもわからないんだし」
私が怖がってる？
「それはそうなんだけど、でも……」
「でも、何だよ？」
言いにくいけど言った方がいいのかな？もし言って和磨が私を嫌いになったり、豹変したらそれまでだった恋……。
「私は、それでもやっぱりそれだけの付き合いは嫌だから、会う度とかしたくないの。もし……もし和磨が、それじゃなきゃ嫌だって言うんだったら……」
「珠美。もういい。それ以上、言うな」
和磨……。
和磨がポケットから携帯を出して、何処かに電話をかけ始めた。
何？
何でこんな時に電話なんてするの？
「和磨。何で電……」
「あぁ、俺。まだ起きてたか？珠美、帰すから。玄関の鍵開けといてくれ」
和磨。
電話を切って和磨が私の腕を掴んで一緒に立ち上がらせると、玄関のドアを開けて外に出てまた鍵を締めた。
「和磨。私……」
和磨は黙ったまま、私の家の方へと歩き出した。
「和磨。何、怒ってるの？」
「怒っちゃいねぇよ」
和磨は優しい声で、私に返事をしてくれた。家の角を曲がると、タバコに火を付け空を見上げた和磨が振り向いた。
「珠美。暫く会うのはよそう」
エッ……。
「和磨。何で？」
「今のままじゃ、俺……お前を束縛しそうで嫌だから。気持ちが落ち着くまで珠美には会わない。だから、珠美も自分の好きなようにしていいぜ。俺に構わず、勿論、あの加納って人にも会っていいんだからな」
「和磨……。何で？」
「おやすみ」
「和磨。暫くって……」
振り返る事なく、和磨は行ってしまった。
何故？
和磨を傷つけるような事、言ってしまったの？