婚活
和磨が電話をしてくれたので、すでに裕樹が鍵を開けて置いてくれたらしく、ドアを開けると裕樹が目の前に立っていた。
「姉貴。何、やってんだよ」
「えっ?」
「和磨。あぁ見えて、結構モテるから……。うかうかしてると、他の女に盗られるぜ?」
「……」
「姉貴?」
「そしたら仕方ないね……。おやすみ」
「おい、待てよ。和磨と何があったんだよ?」
裕樹が慌てて後から階段を上ってくる。
「うるさい。そんな大きな声出したら、お父さん達が起きちゃうでしょ?静かにしなさいよ」
部屋のドアを開け、裕樹が入って来られないようにしたかったが、隙を突かれて一緒に部屋に入ってきてしまった。
「姉貴は和磨の事、嫌いなのかよ?」
「裕樹。もう寝たいから出てって」
「何だよ」
裕樹の背中を無理矢理押して、部屋から追い出そうとした。
「和磨さ……。姉貴の事、小さい頃からずっと好きだったんだよ。俺にはわかってた。和磨は姉貴の事、昨日、今日好きになったわけじゃない。だから姉貴の事は絶対大切にしたいと思ってるはずだぜ。でも姉貴と価値観が違ったら、いくら想っていた年月が長くても 無理だよな」
「裕樹……」
価値観の違いって、何?
寝ながらずっとその事ばかりを考えていたが、週明け、やはり朋美と由佳に相談する事にした。
「久しぶりの居酒屋だね」
「取り敢えず、乾杯」
適当につまみを頼み、気心の知れた二人に和磨の事を話した。
「白石って、そんなに盛ってるんだ」
「朋美。そ、そんな言い方しないでよ」
面と向かってズバッと言われると、恥ずかしくなってしまう。
「盛ってるというより、白石はもしかして自分に自信がないとか?」
和磨が自分に自信がない?
「あぁ、それはあるかもね。年下って事に何やら固執してるみたいな感じだし、それが自分にとってネックになってるとでも思ってるのかも」
和磨は、そんなに年下だって事を気にしてるの?
「でも、珠美も加納さんに和磨の事を相談する事はおかしいと思うよ。だって二人だけで会ってるわけでしょ?自分がそれされたらって考えると、もし私が彼氏に私の事で別の女に相談されて、しかも二人っきりで会ってるとか聞いたらやっぱり嫌だよ」
朋美……。
「和磨に一応、断ったんだけどね……。でもそう言われてみれば、そうかもしれない。加納さんにも、和磨と付き合ってるとは知らないで会った事に驚かれちゃったし……」
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