婚活
「加納さんはいい人だよね。私、やっぱり最初から加納さんにしとけば良かったよ」
「朋美」
そう言えば、朋美は最初からそんな事を言ってた覚えがある。
「でも、私は堪ったもんじゃないわ」
由佳が半ば吐き捨てるように言った。
「何でぇ?」
「朋美はそう言うけど、たかが男に会っただけで何かこう……自暴自棄になられちゃっても重いよ。まして、珠美は会ってくるっ 事前に白石に言ったわけでしょう?」
「うん……」
「それで行ってもいいってリアクションしたんだったら、ウジウジ言わないで欲しいわね。嫌だったら行く前にいくらでも止められたわけだしさ。いちいち男に会ったからって、その度にそんな騒がれてやけ酒されたんじゃ、堪ったもんじゃないわよ」
由佳は一気にジョッキのビールを飲み干した。
「ドーンと構えてられる男かと思ってたけど、白石はそうじゃないんだね。でも年下って負い目があるから、背伸びして珠美には会って来い!みたいな事言ったと思うよ。でもその後、やけ酒じゃねぇ……。私だったら引いちゃうかも」
由佳は実際、年下の彼氏と付き合ってるので、何だか言い得て妙な言葉に聞こえた。
「それと……。暫く会うのよそうって、どういう事なの?」
「聞こうとしたんだけど、そしたら和磨が今のままじゃ、私を束縛しそうで嫌だからって……」
「……」
由佳が黙ってしまった。
「白石。何、考えてんだ?その間に珠美にもし他に好きな人が出来たりしたら、それこそ どうするつもりなのよ」
「それはないよ」
「でもいつ何時、出逢いがあるかわからないんだからね。そうそう、加納さんだってフリーなわけだから。あっ、でも加納さんには会っちゃいけないのか」
「ううん。加納さんにも好きに会っていいって、和磨は言ってた……」
「はぁ?」
私の好きなようにしていいと和磨は言った。でも……それってどういう意味だったんだろう?
「そこでも白石は、気持ちを抑えてるんじゃない?」
「由佳ちゃんもそう思いますか。私もそう思ってましたよ」
お酒の弱い朋美が、少しふざけながら由佳の言葉に賛同している。
「本当は会いたいけど、会わない。他の男に会って欲しくはないけど、会ってもいいとまで言っちゃうなんて、どれだけいじらしい男なんだろうね」
「それだけ珠美の事が好きなんじゃなぁい?」
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