婚活

付き合わない方が良かったのかもって、和磨。本当にそう思ってるの？和磨が好きなはずなのに、どうしてだろう？上手く言葉でそれを言い表せない自分。和磨はきっとそんな私を見て、イライラしているんだろうな。
いろんな意味の悲しみが、こみあげてきていた。和磨に辛い思いをさせている不甲斐ない自分。和磨を前にして、声をあげて泣いてしまいそうで口を右手で押さえながらボロボロと泣き出してしまった。
「珠美……」
和磨が静かに私を抱き締めると、そっと唇に触れるだけのキスをした。
「俺、子供じみてると思うかもしれないけど、珠美と……どう接していいのかわからねぇよ」
全然、子供じみてないよ。和磨……。そうさせているのは私なんだから。
「和磨。それは違うから」
「違わない。珠美は俺と付き合うようになってから、どんどん珠美らしさがなくなっていってる。何かに怯えてるみたいに正面からいつも俺を見てないし、目が合ってもすぐ逸らす。そうだろ？」
「それは……」
違うの和磨。ドキドキしてるから、まともに和磨の顔が見られないんだって。
「前は、バンバン俺にこれでもかっていうぐらい、ズケズケものを言ってきてた。だから　そうさせたのは俺なのかと思うと俺は……」
「和磨は私の気持ちなんて、ちっともわかってくれてない」
和磨が驚いた顔をしながら、私を見ている。
「私は……」
「先生。白石先生」
エッ……。
見ると、青川学園の制服を着た生徒が一人立っていた。
うわっ。
和磨も振り返り、生徒の存在に気付いたようだ。まずいよ。和磨と一緒に居るとこなんて、青川の生徒に見られたら……。慌てて歩きかけたが、和磨に腕を掴まれた。
「和……白石さん。それじゃ、私はここで……」
和磨と言い掛けて慌てて言い換えたが、バレなかっただろうか？
「珠美も、ここに居てくれ」
「えっ？」
「いいから」
和磨の視線の不自然な動きから、恐らく生徒と二人だけになる事を嫌がっての言動だと悟り、仕方なく少し離れて二人の会話を見守ることにした。
「先生。何で手紙の返事をくれないんですか？」
手紙？
「先生は私の手紙を、ちゃんと読んでくれたんですか？」
この前の手紙って……そういうものだったのね。