婚活
「裕樹。珠美。和君、来てるわよぉ」
和磨……。
あれ以来、会ってなかった和磨が家に来てしまった。そうか……。週末、来るって言ってた。あれ以来、和磨と会わなかったけれど、ふと気付くといつも和磨の事を考えてる。勝手だよな、私……。
「今までのように楽しくやろうぜ。三人でさ」
あれは本心で言ってくれてた?毎晩のように夢の中に出てきていた、和磨の後ろ姿。どんな顔をして会えばいいの?
取り敢えず、洗面所で顔を洗いながら気持ちを落ち着けようと必死で、自分の家なのに足音を忍ばせるようにしてリビングに向かうと、和磨が裕樹と話している姿が目に飛び込んできた。
「ヨッ!珠美。いつまで寝てんだよ。寝ブタになるぞ」
和磨……。
「か、勝手でしょ?休みの日に私がどうしようと、和磨には迷惑掛けてないと思うけど」
「姉貴。何で、そういつも寝起き悪いんだよ」
裕樹?
「何だ、何だ?和君と珠美は、もう夫婦喧嘩でも始めたのか?」
「お、お父さん。何言ってるのよ。余計な事、言わないで」
夫婦喧嘩なんて多分……一生、和磨とは有り得ないから。
「姉貴。これから和磨と河口湖でも行こうかって言ってるんだけど、一緒に行くか?」
河口湖?
「疲れてるからいいよ」
「それじゃ、困るんだよ」
和磨が突然、変な事を言い出した。
「何?」
「裕樹は新しい彼女連れてくるから、男二人だと警戒されるだろう?」
新しい彼女?
「それと私とどういう関係があるのよ?だったら和磨も行かなければいい事でしょ?悪いけど、あんた達の女遊びに私を巻き込むのはやめて」
「姉貴?」
「珠美。言い過ぎだ」
言い過ぎ?何でも言える、言い合える。そんな関係に戻れたらいいって、この前、和磨が言ってたのに。言い過ぎか……。もう何も話せないな。強気で責めなきゃ、和磨を目の前にして壊れそうなのに……。お腹は空いていたが ーヒーだけ飲んで、そのまま食器をキッチンまで運び、おかずをラップして冷蔵庫にしまうと、和磨の姿を見なくていいようにキッチンの横から廊下に出て二階の自分の部屋へと向かった。
独り暮らししたいな……。ベッドにゴロンと横になりながら天井を見て、ふとそんな考えが巡らせていると携帯が鳴っている事に気づいた。誰だろう?怠い身体を起こして画面を開くと由佳からだった。
―おはよう。起きてる?珠美は何してるの?暇だったら出て来ない?―
由佳……。
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