婚活
「好きになったら今まで自分が嫌だった事も、好きな人がしていたら許せちゃう。それが 惚れた弱みなんだけど、でもそれは最初の頃だけ。長く一緒に居ると、最初の頃のときめきなんて忘れちゃうものよ。その時、ふと魔が差したりするとそれを境にして今まで許せてた事も、急に許せなくなってきたりするものなの。一番いい時は、ときめいちゃってるから何もかも許せるんだけど、それが永い年月とともに許せなくなるって事は舞い上がってたから。それに隠れてて気付かなかったけど、実際冷静になって考えてみると我慢してたって事もあるわけでしょ?良いというか、悪い例がここに居るわよ」
「由佳」
「もうね。倦怠期なんてもんじゃないって時だってあったわよ。あぁ、こういう時に何かがきっかけで別れるんだなって」
「由佳。まさか……」
「そう。別れちゃった」
嘘……。
「別れちゃったって、由佳。マジで?」
いくら先の見えてる恋だとは言ってたけど、まさか本当に別れるとは思わなかった。
「わかってはいたけどさ……いつかは終わりが来るって自分でも自覚してたつもりだったんだけど、この部屋にいつも居た人が居ないと、やっぱり何か違和感あるよ」
由佳。ちっとも知らなかった。自分の事で精一杯だったから……。
「何時?」
「昨日」
そう言えば、玄関に彼氏の靴がないなとは思ってた。いつもだったら2、3足は置いてあったのに。
「このままズルズル行くのも良くないかと思って……。だったら早い方がいいって……」
「彼氏は……彼氏とは話し合ったの?」
「話し合ったわよ。でも結局、平行線だった。お互い、先が見えてたから堂々巡りだったしね」
由佳……。
「田舎に帰らなきゃいけない嫡男と、都会でしか生きられない私。愛があれば田舎でもやっていけるのかなって、一時は思った事もあったけど、でもやっぱりそんな甘いもんじゃない。同居ももれなく付いてくるわけだったし、負の方が私には多過ぎたから彼氏も強くは押せなかったんじゃない?」
「何でそんな客観的に見られるの?好きだった人との生活は何だったの?」
「珠美。彼氏があそこで強く押したとしても、きっと私は首を縦には振らなかったと思う。それだけの恋だったんだよ。もし……本当に心底愛していたら、迷いはなかったと思うもん」
由佳は辛いだろうけれど、気丈に私に説明してくれている。私も……私ももっと強くならなきゃ。
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