婚活
「えっ?」
「男なんて、星の数ほど居るのよ?しかも珠美も白石も同じ地元に住んでるし、ある意味 視野も狭い気がするんだけど……。白石のどこに魅力を感じるの?」
「由佳。和磨は視野狭くないよ。年下だけど私よりしっかりしてるし……。だけどそんな和磨に私が付いて行かれなかったの。怖さが先に立っていたというか」
「誰だって人を好きになると臆病になるもんだよ。くどいようだけど きっと白石だって 珠美と同じだったと思う。珠美は暫く誰とも付き合わない方がいいかもね」
「何で?」
誰とも付き合わない方がって、恋を忘れるためには新しい恋って言わない?
「今、誰かと付き合っても、きっとどんな相手でも白石と比べるから」
「……」
一番、核心を突かれた気がする。加納さんも前に言っていたが、由佳はまだ私が和磨を好きだとわかっている。
「由佳……。私、今日は潰れるから」
「いいよ。帰らなくていいんだから、とことん潰れな」
思いっきり飲んでそのまま寝ていたらしく、喉が渇いて目が覚めた時には布団に寝かされていた。
起き上がった途端、頭が痛くて思わず両手で頭を押さえた。
「起きた?」
「うん。おはよう」
「何?その酷い声。お水飲んで顔洗ってきな。ご飯作ったから」
「ごめんね、由佳」
「何、言ってるのよ。あのさ、もし……。珠美。何でもない。早くすっきりしておいで」
「う、うん」
由佳は何を言いかけたんだろう?由佳らしくない言動に少し疑問を感じたが、それ以上は追求しなかった。思いっきり飲んだら忘れられるかと思ったが、帰り道、和磨の家の前を通ると、いつも以上に胸が苦しくなっていた。馬鹿だな、私……。こんな思いまでするんだったら、何で和磨に自分からあんな事言ったりしたんだろう。勝手過ぎる自分に無性に腹が立った。でも腹が立っていたのは自分というより、自分で自分の心が読めず、ただ暗中模索を繰り返しているだけの不器用な心に対してなのかもしれない。

鬱陶しい梅雨が終わり、今年も酷暑と言える夏がやってきた。梅雨の季節もそうだが、夏特有の夕立があったりすると蒸し暑さとともに髪も乱れるし、どうも歩き方が下手なせいか泥はねが酷くストッキングに跳ね上がり、いつも会社から帰って自分の脚を見る度に溜息が出ていた。そんな今日は業者の返事待ちで、だいぶ遅くなってしまった。お腹空いた……。
「ただいま」
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