婚活
慌てて会計を済ませていると、和磨達もレジに向かってきた。何で来るのよ?いったいいつからここに居たの?知っていたら入らなかった。否、今となってはわからないけど、もし和磨がファミレスに居ると知っていたら私はどうしたのかな?
―ありがとうございました―
やっぱり入っていたのかな……。お店を出た途端、虚しさとも悲しさとも違う、悔しさだか情けなさなのか、何だかよくわからない感情で頭が混乱していた。会いたくなかった……。でも和磨に会いたかった。馬鹿だな……。何やってんだろう。今更、和磨の気持ちが戻ってくるとか期待していたんだろうか?
「珠美」
交差点を渡り終えると後ろから和磨の声がして、ゆっくり振り返りながら拒絶反応を示している心と、それでも和磨と関わっていたい未練がましい気持ちが和磨の姿を捉えながら見え隠れしているのが自分でもよくわかった。
「珠美。何でいきなり何も食わねぇで帰ったりするんだよ」
和磨は、誰のせいだかわかってないんだ。
「珠美?」
「ごめんね、和磨……。これ以上、私に……」
これを言ったら、もう和磨とは……。
「何だよ?」
「あ、あのさ、和磨。新しい彼女でも出来たの?」
意気地無し。臆病者の私。本当は和磨にこんな事、聞くつもりもなかったくせに、咄嗟に ついて出た言葉は一番聞きたくなかった事……。
「そんな事聞いて、どうするんだよ?」
「そ、そうだよね。私には関係なかったわ。あっ……ごめん私、コンビニ寄っていくから ここで……」
曲がりかけた和磨よりワンテンポ遅らせて、そのまま曲がらず真っ直ぐ行こうとした。こんな日にCDなんて借りたら、後々、その曲を聞く度に今夜の出来事を思い出しそうだから今日は行くのはやめておいた方が良さそうだ。その代わり、コンビニでも寄っていこう。頭の中であれこれ消去法を使って、コンビニに行く事だけを考え歩き始めて、わざと話しの途中で別れ、和磨の後ろ姿は見ないようにした。
「待てよ、珠美」
背後から聞こえる和磨の声に振り向く事なく立ち止まり、目を瞑って深呼吸をした。
「珠美。椎名の事、どう思った?」
和磨。友達思いなのはいいけど、あまりにも酷い仕打ちじゃない?
「別に……」
正直な気持ちだった。何とも思わないし、思えない。和磨の友達なんだって感じで、それ以上のものはない。
「珠美。何、ツンケンしてるんだよ?」
もう限界だ……。
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