婚活
「食べてきた。でも、何か果物食べようかな?着替えてくる」
部屋に入り、着替えようとしてシャツのボタンを外しながら電気を付けた。
「うわっ。眩しいなぁ」
「ちょ、ちょっと和磨!あんた、人の部屋で何してんのよ」
部屋の電気を付けると、和磨が私のベッドに寝ていた。何で、和磨がここに居るのよ。
「頭、ガンガンする」
はぁ?
「二日酔いで珠美のその声、頭ガンガンする」
「二日酔い?和磨、何?昨日の酒が、まだ抜けないの?今何時だと思ってるのよ。もう21時過ぎてんのに、まだ二日酔いって……。あんたは、どんだけ飲んだのさ?」
半ば呆れながら、和磨を揺り起こす。
「昨日の夜、一升半……ぐらいかな?それでも今朝、裕樹のヤツ。ピンピンして出掛けてった」
裕樹と飲んでたんだ。
「裕樹と一緒に飲んだら、潰れるのわかってるくせに。奴は、うわばみだよ?」
「わかってるよ。わかってたんだけど、気付いた時は遅かった」
馬鹿じゃないの?
「でも、それで何で和磨が勝手に私のベッドで寝てるのよ」
「いろいろ兼ね合いがあって、こうなった」
気怠そうに和磨がベッドから起きあがり、右手で頭を押さえている。
「和磨が二日酔いなのと、それとこれとどう関係があるっていうの?」
「珠美。もう少し小さい声で話せ。頭ガンガンする」
「悪うござんしたね。これは地声なんで、無理ですからぁ」
「うわっ。この性悪女」
わざと和磨の耳元で、大声を出してやると、和磨は仰け反った拍子にベッドに転がった。
「熊谷さんがさ……」
エッ……。
熊谷という名前を聞くと、どうしてもこの前の帰り道、こめかみにキスされた事を思い出してしまう。
「どうかした?」
「べ、別に……。熊谷さんが、どうしたって?」
そんな私の態度を敏感に察知する和磨には、絶対知られたくない。それこそ、何言われるかわかりゃしないもの。
「近いうちにまた飲みに行かないかって、日帰り際に言ってた」
熊谷さんが?
一瞬、またこめかみにキスをされた場面がフラッシュバックした。
「そ、そうなんだ。それじゃ、また朋美や由佳も誘わなきゃね」
きっと朋美は浅岡が来ると知ったら、もう来ないだろう。由佳は由佳で和磨の事がもしあったとしても、あれから直接話してはいないがそこは由佳の事、彼氏と同じ年下の和磨の事など眼中にない気がするから誘えば来てくれそうな気がする。
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