婚活
「そうですか。わざわざご連絡ありがとうございます」
まったく落胆するも何もなかった。ただ世の中には、本当にいろんな男がいると実感出来て勉強になった。560円の学習料と思えばいい。
「それでですね。早速なんですが、また沢村様にお会いしたいと申し込みがございまして……」
「えっ?」
「如何でしょうか?」
この際だから、いろんな男を見るという観点から会ってみるのもいいかもしれない。
「はい。ありがとうございます。是非、よろしくお願いします」
「そうですか。では早速、お話を進めさせて頂きまして、またお会いする日をご連絡させて頂きますが、ご都合の悪い日などはございますか?」
「いえ、特にはないです」
先方と連絡を取ってもらい、会う日は木曜日の仕事が終わってからになった。何故か、最近、週末ではなく仕事帰りに会うのが続いているが、かえってその方が時間的にもちょうどいい気もする。待ち合わせの時間に向かうと、今度は前回の男とは違ってもう相手の男性は来ていた。よくよく考えてみると、前回の男はあんな考えの持ち主だったから、女が待つのは当たり前ぐらいにしか考えていなかったのかもしれない。
「初めまして、景山です」
「初めまして、沢村です」
第一印象は、とても爽やかなイメージだった。
「お腹空きません?」
「えっ?」
「もし良かったら、食事でもしませんか?」
食事って……。てっきりお茶だけだと思っていた。こういう時って、同調した方がいいのか?それとも図々しいと思われないよう、お茶にして下さいと言った方がいいのかな?困った。
「食事だと構えちゃうとか?でも本当に今、お腹空いてて、あっ……」
思いっきり男性のお腹が鳴ったのが聞こえた。
「プッ……」
本当にお腹が空いているんだとわかり、タイミングよくお腹が鳴ったのが妙にツボに填って吹き出してしまった。
「ねっ?訴えてるでしょう?」
「そうですね。早く食事に行きましょう」
流石に飲みに行く事はせず、男に任せると無国籍料理のレストランに連れて行ってくれた。料理の味よりも男との会話が面白くて、あっという間に時間が経っていく。
「相談所に申し込んだもの親がうるさいからで、正直、婚期もそれこそ結婚の二文字も俺の辞書にはなかったし、今も……って、こんな事言ったら不謹慎なんだろうね」
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