婚活
「そうか?部活の顧問も結構大変だし、何かもう面倒だから」
当分いいって、和磨……。
「お前……まだ姉貴の事、忘れられねぇのかよ?」
「……」
和磨は何も答えてない?私が聞こえないだけ?
「やっべぇ。図星かよ?俺、冗談で言ったつもりだったのにお前が黙っちゃうなんて、相当堪えてんだな」
和磨?
「堪えちゃいねぇよ。ただ、珠美の事は……」
「珠美。そんなところで何やってるんだ?トイレか?」
「お父さん」
振り返ると、父親が不思議そうな顔をして立っていた。それと同時に、裕樹と和磨がリビングから顔を覗かせた。
「う、うん。今トイレから出たところよ。お、おやすみ」
自分の家なのに逃げ出したい気分で、慌てて階段を駆け上がって部屋に飛び込んだ。最悪……。立ち聞きしてたの、バレちゃった。明日、何言われるかわからないな……。
ベッドに横になり、天井を見ながら和磨の声が蘇っていた。
「女?女は当分いいや」
「そうか?部活の顧問も結構大変だし、何かもう面倒だから」
「堪えちゃいねぇよ。ただ、珠美の事は……」
あの後、和磨は何て言うつもりだったのかな?女は当分いい……面倒だから。和磨にとって、今はそういう環境なんだね。私は……。
7時に目覚ましをセットしてあったので、翌朝、相談所の有田さんから連絡が入った時にはすでに起きていて、いつでも出掛けられる体勢でいた。そして約束の11時に間に合うように支度をして10時に家を出ようと玄関で靴を選んでいると、二階から 裕樹が降りてきた。
「ふわぁぁ……姉貴。早いなぁ、もう出掛けるのかよ?」
「そうよ。早起きは三文の得ってね。あんた、いつまで寝……」
下を向いて靴を履きながら裕樹に毒ついていたが、履き終え顔を上げると裕樹の後ろの 階段の途中に和磨が立っていた。
「行ってきまぁす」
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