婚活
加納さんから初めて聞いた、最初で最後のさよならだった。きっともう加納さんには会えない。そんな意味がさよならの言葉の裏に隠されていた気がする。彼女との生活を大切にするためだろう。加納さん……。本当に良かった。加納さんが迎えに来てくれる事を彼女は待っていただなんて……。何て素敵なんだろう。買い物なんてもうどうでも良くなって、足取りも軽く家に向かっていた。加納さんにもう会えないのは、正直、とても寂しい。何だか、お兄さんと会えなくなってしまった妹のような気分だった。せっかくおめでたい雰囲気なのに、和磨と別れたとはどうしても言えなかったな。言えなかったけど、言わないままで良かった。加納さんに余計な心配はもう掛けちゃいけないんだし、今はずっと彼女を想い続けて苦しみもがいてた時期を忘れるぐらい、幸せな時を過ごして欲しいもの。加納さんから結婚の報告を聞けて、嬉しさと少しだけの寂しさを抱きながら家に帰ると、早かったせいか和磨の靴が玄関にまだあった。和磨の靴をジッと見つめ、顔を上げる。
「ただいま」
和磨には和磨の世界があるのだから、私はその世界を邪魔してはいけない。たとえ、弟のところに遊びに来ていたからといって、機嫌を悪くするのは大人気ないだけ。
「お帰り。早かったわねぇ。お昼は食べてきたの?」
「食べてきたよぉ」
本当は食べてなかったが、食べたい気分でもなかった。部屋に入り部屋着に着替える。暑いなぁ……。エアコンを付けてゴロンとベッドに横になった途端、涙が溢れてきた。自分でも何で泣いているのかその訳がわからなかったが、涙がこみ上げてきてどうしようもなかった。俯せになり両腕を真上に挙げたまま、ベッドカバーをギュッと両手で掴む。欲張りだ……私。加納さんの事、意識していたわけじゃないのに、それなのにいざもう会えないと思うと、何だか失ってしまった気分になっている。何なのよ、この欲張り女の沢村珠美。彼氏でもない加納さんが結婚する事が、そんなにショックなの?悔しさと情けなさで 奥歯を食いしばる。でもエアコンの効き具合が心地よくて、昨日遅かったせいもあっていつの間にかそのまま眠ってしまったらしく、裕樹が起こしに来るまで気付かなかった。
「姉貴。夕飯終わったら、花火しねぇ?」
「花火?」
「さっき、和磨と買ってきたんだ」
和磨も居るんだ……。
「ただいま」
和磨には和磨の世界があるのだから、私はその世界を邪魔してはいけない。たとえ、弟のところに遊びに来ていたからといって、機嫌を悪くするのは大人気ないだけ。
「お帰り。早かったわねぇ。お昼は食べてきたの?」
「食べてきたよぉ」
本当は食べてなかったが、食べたい気分でもなかった。部屋に入り部屋着に着替える。暑いなぁ……。エアコンを付けてゴロンとベッドに横になった途端、涙が溢れてきた。自分でも何で泣いているのかその訳がわからなかったが、涙がこみ上げてきてどうしようもなかった。俯せになり両腕を真上に挙げたまま、ベッドカバーをギュッと両手で掴む。欲張りだ……私。加納さんの事、意識していたわけじゃないのに、それなのにいざもう会えないと思うと、何だか失ってしまった気分になっている。何なのよ、この欲張り女の沢村珠美。彼氏でもない加納さんが結婚する事が、そんなにショックなの?悔しさと情けなさで 奥歯を食いしばる。でもエアコンの効き具合が心地よくて、昨日遅かったせいもあっていつの間にかそのまま眠ってしまったらしく、裕樹が起こしに来るまで気付かなかった。
「姉貴。夕飯終わったら、花火しねぇ?」
「花火?」
「さっき、和磨と買ってきたんだ」
和磨も居るんだ……。