婚活
前を走っていた和磨がいきなり止まり、私の手首を引っ張った。和磨は何も感じないのかな?感じないよね……。もう昔の話しって感じだしね。交差点を渡り終え、和磨が掴んでいた手を離した。
「珠美。運動不足なんじゃねぇの?老化街道一直線だぜ?婚期遅れるぞ?」
「あぁ、もう和磨うるさい。一歳しか違わないんだからそんな変わらないでしょ?」
まったく和磨は老化とか、婚期とか、グサグサ来る事平気で言うんだから。
「遅れると、裕樹がうるさいから急ごうぜ」
はぁ?
私の言葉はスルーなの?
「あっ、和磨。ちょっと待ってよ」
和磨の歩調に合わせていたら息が切れてきた。男って、どうしてこう歩くのが速いんだろう。中央公園に着くと案の定、裕樹と彼女はすてに来て準備を始めていた。
「おっせぇよ、和磨」
「悪い、悪い。珠美があまりにも足が長くて、もつれちゃってさぁ」
「はぁ?」
「亜紀子です。初めまして」
「あっ、裕樹の姉の珠美です。初めまして」
裕樹にはもったいないぐらいの美人だよ。
「和磨君。久しぶり」
「ヨッ!」
和磨は、この子と顔見知りなんだ。そうだよね。裕樹と一緒にいろいろ出掛けているだろうし……。
「バケツに水汲んできたから、始めようぜ」
花火をしていると、自然と童心に帰ってしまう。
「珠美。この長いヤツ、お前好きだろ?」
「う、うん」
裕樹と彼女が線香花火に没頭している間、和磨がドラゴンやちょっとした打ち上げ花火を あげながら私に差し出した。
「ほらっ」
「ありがとう」
和磨が火を付けてくれて、勢いよくシュッと青い炎が足元を照らす。
綺麗……。
「ほら、和磨。見て、見て。綺麗だよ」
弧を描くようにグルグルと回すと青い炎の残像が綺麗な輪を作り、それを見ているだけで 嬉しくなってジッとしていられず走り回ってしまった。
「見て、見てぇ」
花火で弧を描きながら走り回っている私を見て、和磨は指をさして笑っている。花火って やっぱり楽しいな。
「それじゃ、俺は亜紀子送ってそのまま外泊だから、姉貴よろしくな」
はい?
裕樹の顔を覗き込んだが、シレッとしたまま帰り支度をしている。
「う、うん。わかった」
「和磨。バケツ悪いな」
「これ持って帰るのかよ?何か、変なお兄ちゃんになってないか?」
変なお兄ちゃんって……。
「もう、オジサンだよ」
ブッハッハ……。
< 230 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop