婚活
「えっ?あのね、こちらの方達が……」
「三人で、いらっしゃったんですか」
「はい」
由佳が二人の男に対応していたので、私はさっきチラッと見掛けた人をもう一度探そうと後ろを振り返った。すると先ほどの場所にはもうその人はおらず、もしかして他人の空似かなと、そう解釈してもう一度、前を向こうとしたその時、先ほど見掛けた人が歩いているのが見えた。
「あっ……」
「どうしたの?珠美」
「こちらの方達が、あっちのテーブルでご一緒しませんかって」
「う、うん……。由佳。ちょっと……」
「えっ?何?」
「珠美?」
「朋美。ちょっと、待っててね」
「うん。わかった」
朋美は何事が起こったのかという顔をしたが、そこは朋美の社交性の良さですぐに相手の男性二人と会話を始めていた。相手の男性二人には悪かったが、対応していた由佳を引っ張って少し場所を移動し、人気のないところに連れて行った。
「どうしたの?珠美。こんなとこまで連れてきて、せっかく声掛けられたのに」
「由佳……。淳君が来てる」
「えっ?」
由佳が慌てた表情で、フロアーの中を急いで見渡している。
「由佳。あそこに居るのって、淳君じゃない?」
私の指差した先を由佳が目で追う。
「淳……」
由佳は淳君の姿を見つけると、私の錯覚だろうか。驚いた顔をした後、愛おしそうな表情をしていた。
「由佳。淳君のところに行ってあげたら?」
「えっ?」
由佳が目を見開いて私を見た。
「だってせっかく再会出来たんだし、知らない仲じゃないんだから。不自然でしょ?淳君はまだ気付いてないみたいだけど、お互い無視してるなんておかしいよ」
「……」
他人の事となると、何でこうも視野が広く見られるんだろう。
「ちょっと、珠美と由佳。どうしたの?」
一人で対応するのに手をやいたのか、それとも朋美のタイプではなかったのか、朋美がこちらに向かって来た後ろには、先ほどの男性二人はもう居なかった。
「朋美。ごめんね」
「どうしたのよ。急に二人でいなくなっちゃうから焦ったじゃない」
朋美のブーイングに手を合わせて謝る。
「あのね、あそこに淳君が居るの」
「えっ?」
朋美も淳君という名前に反応して、後を振り返った
「嘘……。何で?まさか由佳が誘ったわけじゃないでしょ?」
「何、言ってるのよ。私が誘うわけないじゃない」
由佳が朋美の腕を抓っている。
< 235 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop