婚活
「痛い。それもそうだよね。という事は何?淳君もこの合コンに参加しに来たって事?」
朋美……。それ禁句だよ。
「そうらしいわ」
あーん。由佳が、等閑の返事をしちゃったよ。せっかく淳君のところに行きそうな気配だったのに……。
「由佳。行くよ」
エッ……。
「朋美。行くって、何処に行くのよ」
「決まってるでしょ。淳君のところよ。せっかくここで会ったも何かの縁。挨拶ぐらいしに行かなきゃ」
「ちょ、ちょっと朋美。やめてよ!離してって」
プッ!
朋美は朋美なりのやり方で、由佳を淳君に引き合わせようとしてくれているんだ。
「いいから来なさいって。私達も付いていってあげるから。ねぇ、珠美」
「勿論」
「ちょっと二人とも、何考えてんのよ」
ブツブツ言いながら抵抗する由佳を朋美と両サイドから腕を組んで、半ば引きずるようにして淳君の居る場所へと連れて行った。
「じゅーん君」
朋美のまるで小学生並みの呼び方に、周りに居る人が一斉にこちらを振り向いている。恥ずかしいなぁ……。すると淳君も驚いたように、こちらを振り返った。
「由佳……」
そして先ほどの由佳と同じように由佳の名前を呼ぶと、しばしお互い放心状態のようになって黙ったまま見つめ合っていたが、先に由佳が耐えきれなくなって下を向いてしまった。
「由佳。何でここに?」
相当動揺しているのか、淳君が随分間抜けな質問を由佳にぶつけている。
「……」
由佳?
由佳は下を向いて黙ったままだ。
「由佳?」
いつもの由佳らしくない行動に、淳君も心配そうに由佳の顔を覗き込みながらもう一度、名前を呼んだ。
「それは、こっちの台詞よ」
下を向いたまま、由佳が淳君にやっと口を開いた。
「えっ?」
周りの雑音でよく聞き取れなかったのか、淳君が聞き返している。
「それは、こっちの台詞だって言ってるの!」
由佳が顔をあげ、 淳君に向かってもう一度同じ事を言った。その言葉に淳君は、明かに 驚いた表情を浮かべている。
「こんなところで何やってるのよ、淳は」
由佳……。
「珠美」
朋美が小さい声で私を呼ぶと、少し後ろに下がるよう腕を掴んだので、朋美の横に並んで 由佳と淳君の会話を固唾を呑みながら後から見守った。
「俺?俺は見ての通り、集団見合いに参加中?」
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