婚活
和磨も、和磨だよ。だったら、はっきりそう教えてくれればいいものを。そんな事を思い出していたら、人を小馬鹿にしたような和磨の表情が浮かび、腹が立ってきて思わずアイスコーヒーを一気飲みしていた。
「よし!こうなったら熊谷さんの事は置いといて、土曜日の加納さんに賭けてみるか」
「そうこなくっちゃ、珠美」
テーブルの上に拳を突き朋美の合いの手に頷いていると、由佳がまた冷静な目で私を見た。
「因みに聞くけど、珠美の理想の男ってどんなの?」
理想の男?
「勿論、相談所に出したリクエストがそうなんだろうけど、実際どんな男がタイプなの?」
「どんな男がタイプって……。そうだなぁ。朋美が言ってた優柔不断な男は、私もちょっとって感じだけど理想としたら、あくまで理想なんだけど……」
この歳になってまで理想を言うのは、何となく憚られるというか、少し恥ずかしくなってあくまで理想だと念を押す。
「少し強引な感じの男でも、経済観念とかしっかりしてて、一見クールそうに見えるんだけど、思いやりの中にも優しさのある男がいいな」
自分で言ってて、顔が熱くなってくる。
「そりゃ、無理だ」
エッ……。
由佳が呆れた声で、ひと言で断ち斬った。
「10代じゃないんだから、理想と現実をもう少し直視した方がいいよ。実際、そんな王子様みたいな男、居ないって。珠美の言ってる理想の男は、まるで漫画の世界だよ。きっとそれに、容姿は身長も高くて……とか入るんでしょ?」
うっ。モロに、図星だった。
「うん……。出来れば、次男がいいとか……」
「はぁ……珠美。アンタがそこまで乙女チックだとは思わなかったけど、勿論、理想は高く持つ事はいい事だけどさぁ。現実問題、そんな男の存在なんて確率1%もない気がするよ」
「……」
思いっきり由佳に一刀両断されてしまい、返す言葉が見つからない。
「でもさ。そんな事も踏まえて土曜日加納さんを見てみたら、今までとは違った見方も出来るかもしれないジャン?」
朋美。
「それ、さっき私が言った台詞と同じだよ」
「アッハ。そうだっけ?」
「そうよ」
「そっか。珠美も私と一緒で、違った角度から相手を見るって事でどぉよ?」
「そうだね。先週は単なる付き添いって感じでちゃんと見てなかったし会話もおざなりだったけど、今度はもう少し加納さんの事を観察して見るよ」
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