婚活
必死に抵抗するが、髪を毛を掴まれたまま引きずられ膝が痛い。
「何してんだよ!」
怒鳴り声と共に男が掴んでいた髪の毛を離したその拍子に前に倒れ込みそうになり、慌てて両手を突いて難を逃れた。
「女に手出してんじゃねぇよ。この変態野郎。警察行こうぜ」
「和磨」
そこには男の胸ぐらを掴んだまま、今にも殴りかかりそうな和磨が立っていた。
「珠美!警察呼べ」
「えっ?あっ、う、うん」
道に散乱したバックの中身の中から携帯を見つけ、慌てて110番通報する。
「もしもし、スイマセン。今、痴漢に襲われて……。はい。それで犯人捕まえたんですが……はい。沢村珠美と言います。ここの住所は……」
「珠美。サイレン近くなったら 切ってこいって言え」
「あの・・・近くなったら、サイレン切ってきてくれますか?」
和磨に言われるまま、警察に伝える。今居る住所を言い電話を切って警察が来るのを待っていたが、怖くて足がガクガクして立てないでいる。ふと膝が痛いなと思い、さするとストッキングが破けていた。
「勘弁して下さい」
「ふざけるな!謝るぐらいなら、警察いらねぇんだよ」
和磨……。
すぐに2台のパトカーが来たが、頼んだとおりサイレンは鳴らして来なかったので野次馬の人だかりも出来ず、そのまま男とは別のパトカーに和磨と一緒に乗って警察に向かった。
「和磨……」
「何だよ」
「……」
今頃になって怖さが蘇ってきて震えが止まらず、無意識のうちに和磨の腕をずっと掴んでたらしくそれに気付いて和磨に声を掛けたが、何だか言いづらくなってしまいそのまままた黙って下を向いていた。
警察の事情聴取が終わってパトカーで送ってくれると警察の人が言ったが、何故か和磨はそれを断りタクシーで和磨の家まで向かった。
「何で、パトカー断ったの?」
「目立つだろ?」
エッ……。
「こういう事ってさ。ありもしない事言い出す奴が現れて、よからぬ噂が立ったりするからこの方がいいんだよ」
和磨。だからパトカーのサイレンも……。
「上がれよ」
「えっ?い、いいよ。もう遅いから、このまま帰る」
「そんな姿じゃ、おばさん心配するだろ?」
あっ。そうだった。ストッキングが破れて膝から血が出てるし、腕にもひっかき傷が無数に出来ている。
「手当してやるから、上がれ」
「うん……」
久しぶりに和磨の家に入ると、私の姿を見ておばさんが驚いた顔をして出てきた。
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