婚活
「ちょうど俺の家の近くで、自転車とぶつかてったんですよ。それで家寄って手当してから来たんで、少し遅くなっちゃってすいません」
和磨?
「そうだったの。遅くなったのなんて、そんなのは全然構わないんだけど。和君、悪かったわねぇ。珠美が、とんだ迷惑掛けちゃって……。珠美はホントに、おっちょこちょいだから」
お母さん。
「さぁさぁ、上がって。ご飯まだでしょ?良かったら、食べていって頂戴。ちょうど裕樹も帰ってきたとこだから。裕樹。和君見えたわよぉ」
結局、母親に押し切られるように、和磨も一緒に食卓を囲んでいる。さっきの出来事でまだ興奮してるせいか、あまり食欲はなかったがそうも言ってられない雰囲気で、仕方なく お箸を持ってお味噌汁でご飯を流し込む。この時、何事もなかったように振る舞う和磨が何だか頼もしくもあり、複雑な心境だった。
お風呂に入り、先ほどの膝をマジマジと見ると、お湯の熱さに浸みる傷口と共にあの時の怖さが蘇ってきた。
「もう大丈夫だから、安心しろ」
和磨……。
私を抱き締めた和磨に自分でも驚くほどあの時、間違いなく男を感じてしまった。でも、何で抱き締めたりしたんだろう。きっと、怖がってた私を安心させようとしたんだろうな。
それにしてもあの調子じゃ、和磨は手も早そうだ。手が早いと言えば、熊谷さん……。しまった!和磨にさっき、聞けば良かった。何度も聞くチャンスあったのに、惜しいことしちゃったなぁ。あぁ、失敗したぁ。熊谷さんの事、問い質せばさっきだったら和磨の奴、
もしかしたら教えてくれてたかも。相変わらず、詰めが甘い私だよ。
お風呂からあがって部屋に入り、パソコンを立ち上げた。由佳に言われた理想の男の自分でリクエストした項目を、冷静になって改めて見てみる。やっぱり未来王子は、あくまで 王子でしかないのかなぁ。高すぎる理想か……。いずれにしても、グイグイ引っ張ってってくれるような男らしい人が絶対いいよな。
うわっ。
な、何で今、 寄りによって和磨を思い浮かべてんだよ私。確かに、さっきの和磨は男らしかったし男っぽかったけど、あんな変態エロキングなんか、絶対こっちからお断りだ。まして年下なんて、眼中にないし。裕樹と、ひとまとめって感じだよ。慌てて和磨を思い浮かべてしまった事がまるで犯罪のように思えて、首を小刻みに振って打ち消した。
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