婚活
熊谷さん。そんなベタな台詞、この私が言う訳ないじゃない。
「アッハ……。熊谷さん。それこそ、ドラマのお決まりパターンの筋書き通りみたいじゃないですか」
「言うねぇ」
ゲッ。言い過ぎたかも。
「すいません。少し、飲み過ぎたみたいです」
確かに熊谷さんは端から見たら、かなり格好いいんだと思う。だけどそんな熊谷さんに自分自身煮え切らないというか、どこがどうだ嫌とかそんな事ではなく、きっと何かが私の中で違うんだと思う。ピン!と来ないというか……。でもよく雑誌とかにも書いてあるが、この人と結婚するんじゃないかとピン!と来るというけど、前にフラられた男にも私はピン!と来た記憶がある。あれって 人にもよるかもしれないけど、あながちあてにならない気がする。
「そっか……。それじゃ君には、もっともっと自分を磨いてもらう事にしよう。君とこのまま終わるのは、惜しい気がする」
「えっ?」
「また、ちょくちょく飲みに行こう。その君のいう、婚活の様子も聞きたいし」
「はい。もちろんです」
もしかしたら、熊谷さんとはこんな関係がいいのかもしれない。きっと恋愛経験豊富な熊谷さんならいろいろアドバイスもしてくれそうだし、裕樹が和磨と違って大人の男性としての見解とやらも聞いてみたい気もする。だけど……。ひとつだけ、どうしても気になる事があった。
「熊谷さん。ひとつ教えて頂けませんか?」
「何?」
しかし、もうすぐ家の前に着きそうだったので、わざとゆっくりとした歩調に変えていった。
「熊谷さんには、本当は彼女がいらっしゃるんですよね?」
「……」
「熊谷さん?」
熊谷さんがジッと私の顔を見ながら右手の人差し指を立て、親指と共に顔の前でLの字を作った。
「こんな感じ?」
はい?
「人差し指と親指を、まっすぐ伸ばしたまま近づけようとするとさ……」
な、何?
熊谷さんが指をまっすぐ伸ばしたまま、顔の前で動かしている。
「伸ばしたまま動かさない人差し指に親指をくっつけようとする事は容易に出来るけれど、 伸ばしたまま動かさない親指に人差し指をくっつける事は容易ではないんだよね。ほらっ」
ホントだ。動かさない真っ直ぐ伸ばした人差し指に親指をくっつけるのは簡単なのに、
「アッハ……。熊谷さん。それこそ、ドラマのお決まりパターンの筋書き通りみたいじゃないですか」
「言うねぇ」
ゲッ。言い過ぎたかも。
「すいません。少し、飲み過ぎたみたいです」
確かに熊谷さんは端から見たら、かなり格好いいんだと思う。だけどそんな熊谷さんに自分自身煮え切らないというか、どこがどうだ嫌とかそんな事ではなく、きっと何かが私の中で違うんだと思う。ピン!と来ないというか……。でもよく雑誌とかにも書いてあるが、この人と結婚するんじゃないかとピン!と来るというけど、前にフラられた男にも私はピン!と来た記憶がある。あれって 人にもよるかもしれないけど、あながちあてにならない気がする。
「そっか……。それじゃ君には、もっともっと自分を磨いてもらう事にしよう。君とこのまま終わるのは、惜しい気がする」
「えっ?」
「また、ちょくちょく飲みに行こう。その君のいう、婚活の様子も聞きたいし」
「はい。もちろんです」
もしかしたら、熊谷さんとはこんな関係がいいのかもしれない。きっと恋愛経験豊富な熊谷さんならいろいろアドバイスもしてくれそうだし、裕樹が和磨と違って大人の男性としての見解とやらも聞いてみたい気もする。だけど……。ひとつだけ、どうしても気になる事があった。
「熊谷さん。ひとつ教えて頂けませんか?」
「何?」
しかし、もうすぐ家の前に着きそうだったので、わざとゆっくりとした歩調に変えていった。
「熊谷さんには、本当は彼女がいらっしゃるんですよね?」
「……」
「熊谷さん?」
熊谷さんがジッと私の顔を見ながら右手の人差し指を立て、親指と共に顔の前でLの字を作った。
「こんな感じ?」
はい?
「人差し指と親指を、まっすぐ伸ばしたまま近づけようとするとさ……」
な、何?
熊谷さんが指をまっすぐ伸ばしたまま、顔の前で動かしている。
「伸ばしたまま動かさない人差し指に親指をくっつけようとする事は容易に出来るけれど、 伸ばしたまま動かさない親指に人差し指をくっつける事は容易ではないんだよね。ほらっ」
ホントだ。動かさない真っ直ぐ伸ばした人差し指に親指をくっつけるのは簡単なのに、