婚活
門扉を開けようとして、ふと視界の左の方に人影を感じ首を左に向ける。あの事件以来、暗い夜道で人とすれ違ったり遠くに人影を見つけると、異常に反応してしまう。でもそこにあった人影は、曲がり角の外灯に左頬を照らされて遠く離れていてもすぐにわかる人物だった。
エッ……。
その和磨の向こう側に、誰か居る。あぁ、さっきの子か。何してるんだろう。散歩でもしてるのかな。和磨と目が合いながらも、先ほどとは違って冷静な自分がいた。和磨は、やっぱり裕樹の友達だな。弟の友達……。それ以上には、なれない。
開けかけた門扉を全開にして視線を和磨から正面に戻し、門扉を閉めて玄関へと向かった。
「ただいまぁ」
「おかえり」
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