婚活
私にとって、いちばん重要な項目。前回は、確か職業だった。次男と容姿と迷った挙げ句、安定した収入を望んで職業にしたんだった。今回は……。由佳の言ってた言葉や、加納さんに言われた言葉を思い出す。熊谷さんの、親指と人差し指の話し。みんなそれぞれ頷けるものがあったが、でも今の私にとっていちばん重要な項目は……。③番の誠実な人。これかな。すべては、ここから始まるような気がする。相手がどんなに格好よくても、どれだけ財力があったとしても、あっちこっちに目移りされたら結婚する意味がない。夫となる人に嘘はつかれたくないし、私自身もつきたくない。誠実な人。これが扇でいう、要だと思う。要がしっかりしていなければ、扇は決して開かない。閉じたままでは発展はないわけだから、結婚する意味はないに等しい。我ながら、少しは成長したかなと自画自賛してしまう。容姿で選びたいのも山々で、高学歴、高収入も魅力的。でもそれらは、やっぱりあくまでも理想なんだ。中学生や高校生の頃の前途揚々、夢見る乙女じゃないんだから。もう30にもなってることだし、現実志向でいかなきゃいけないんだ。誠実な人……。いい響きだな。

知らぬ間に画面の前で寝ていたらしく、誰かの話し声で夜中に目が覚めた。寝ちゃってたよ。どうりで首が痛いと思った。
パソコンを消してモゾモゾとそのままベッドに移動し、休日前だからこそ出来る夜更かしにも睡魔には勝てずそのまま惰眠を貪っていたが、腰が痛くなって目が覚めた。寝過ぎで 頭痛いな……。鈍い動作で着替えて下に降りていくとすでにもう誰も居なくて、見ると テーブルの上に朝ご飯のおかずがのっていた。
「美味しそう」
ん?
私がいつも座ってる席に、メモが置いてある。
―今夜は帰らないから、玄関のチェーンしちゃっていいよ。―
裕樹の奴、また女だな。ということは……。おぉぉぉ。花の独り暮らしの予行演習出来ちゃうわけ?やった!好き勝手に出来る。こりゃ、ワクワクしてきたよ。でも何をするにしても、まずは腹ごしらえ。お味噌汁を温めて、ご飯をよそう。
「いただきます」
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