婚活
いきなりインターホンが鳴ったので、思わず和磨と顔を見合わせながら玄関の方を見る。
誰?
すると和磨が覗き窓から外を見て、すぐさまこちらに振り返った。
「珠美。お前出ろ」
「えっ?わ、私が?な、何でよ。誰?」
「……」
何で、黙ってるのよ。
「和磨?」
「見ればわかるだろ?」
ぶっきらぼうに言った和磨を横目に、覗き窓から恐る恐るぅ覗くと……。
嘘だ。まさかと思ってもう一度見直したが、やはりそこには熊谷さんが立っていた。慌てて後の和磨を振り返ると、ツンッとしたいつもの不機嫌そうな顔で私を見ている。
「こんな遅くに、何の用なんだ?珠美が呼んだのかよ」
「よ、呼ばないわよ」
「取り敢えず、出ろよ」
「う、うん」
玄関の施錠を外そうとした時、もう一度和磨の方を振り向くと、和磨はどうでもいいといった感じで玄関からまたあがってしまっている。とにかく急いでドアを開けると、そこにはやはり熊谷さんが立っていた。
「こ、こんばんは。どうしたんですか?」
「こんな夜遅くに、悪いな。ちょっと、話しがあっ……」
熊谷さんが話しの途中で視線を動かし、私の後に立っている和磨に気付いたのか、驚いた顔をして和磨の方を見ている。
「白石……。居たのか?」 
「こんばんは。どうしたんですか? こんな夜遅くに」
和磨。それ、思いっきり嫌味っぽく聞こえるよ。
「ちょっと沢村さんに話しがあって……。携帯に何度も電話したんだが、通じなくて」
あっ。
「すいません。携帯部屋に置きっぱなしだったもので、全然気付かなかったです。ごめんなさい。あの……。もし良かったら、お茶でもいかがですか?」
携帯を放置していて何となく電話に出られなかった負い目があり、そう言わざるを得なかった。
「ありがとう。でも、ご家族の方もこんな遅くにご迷惑だろうから、何処か外で……」
「いえ……。両親は旅行に行って居ないので、全然構わないですから大丈夫ですよ」
「今夜、君ひとりなの?」
エッ……。
そう言いながら、熊谷さんが和磨を見た。
「え、えぇ。まぁ……。それでさっき和磨が遊びに来て、今ちょうど……」
「俺、裕樹の部屋に居るわ」
「えっ?ちょっと、和磨」
和磨は階段を一段抜かしで上っていき、二階の裕樹の部屋に行ってしまった。もぉ。私一人じゃ、何か気まずいじゃない。
「それじゃ、ちょっとお邪魔させてもらおうかな」
「は、はい。どうぞ」
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